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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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武王祭 6

 まあ、前からそんなこともありました。

 同期で組んだパーティはいくつかあるけど。

 たぶん、長持ちしたのは、この女剣士を含む――パーティ名:鬼火。

 くらいだろう。


 構成メンバーは、戦士系2名・狩人2名・魔法使いと聖職者の、計6名。


 普通は4ないし5人だけど。

 あたしらのは寄せ集めだった。

 もっとぶっちゃけると、生き残りだけで結成された――とてつもなく“運”のいいやつらの集団――っていう忌名があった。

 運が良い?

 パーティのメンバーが、自分を残して全滅しているのに?

 そんなの、めちゃくちゃ最悪じゃないか。

 だって、さ。

 仲良くなった頃、唐突に別れが来るんだよ。

 目の前で肉片ミンチに成る者。

 魔法で塵に還る者や、死者から呪いを受けて...魂が穢れてしまう者たち。

 そうなったら、安らぎどころか蘇生も出来ない。


 で、メンバーの手によって葬られる。

 葬るのは、最後に生き残った者の務めだ。

 是の何処が...

 何処が、運が良いって言うんだ!!



「おっと、これは...純真無垢なお付き合いでしたか」

 後輩は、バツが悪くなった。

 鼻血流してる女剣士の姿も新鮮だけど、まあ、あれよ...。

 後輩あのこにも話はしておいた。

 あたしの同期が、他の冒険者たちと比較して、異様に数が少ないのか...とか。

 異様に強いのか...とか。

「姐さんはわりと不死身ですよ」

 って言うしか出来ない雰囲気だった。

 修道女が下世話な話を表立ってするものじゃあないし。

 女剣士が腰を落ち着かせているのは、マーケットの中にある喫茶店のひとつ。

 彼女は店雰囲気だけで、選んでた。

「分かってるが、俺たちの同期には敬意を払え、後輩!!」

 差し出されてる腕。

 しばらく放置してたら、

「パンツを返してやれ」

 旧エルフ語で語り掛けてきた。

 見れば、剣士の彼女も耳は丸いが、エルフっぽい雰囲気がある。

 彼女の手を指先だけ摘まみ、

「姐さまの匂い嗅ぎます?」



 コンバートル王国には元から、王族と国家の行く末を占う者たちがあった。

 女神正教会を国教とすると、祈祷師の存在が疎まれるようになる。

 祈祷師と王族の間は、それまで蜜月の時を過ごしてきた。

 中には小煩く、政治に関わろうとする導師も少なくはなかった。

 が、長い歴史の中では些末なことだった。


 爵位が与えられた頃からか、或いは王の弟とする者が入ってからか。

 いや、祈祷師さまと崇拝していた王都の市民らが、信仰の対象を変えた時からだ。


 館主人が若々しく見える時が確かにある。

 90以上の老体には見えない時がある――朝日を背負うときと、陽を仰ぎ見る正午の頃だ。

 そうしている時だけ、王にも見えた。

 一族の子供たちも、この翁に頼りすぎるきらいがある。

 ま、他人事なのでどうでも、いいのだけど。

「武術大会時が決行の時となる」

 館主人が告げてきた。

 夜ともなると、少し翳ってみえる。

 翁の生命力も...

「そこでもう一つ伺いたい」

 ランタンの光に目を細める。

 青年は、紅茶に舌鼓を打ち、少女執事もリズミカルに揺れてる。

「この薬に生命力への影響があるか否かって話か?」

 答えるのは和装の男。

 扇を開いて、顔の半分を隠している。

「ご明察だ! 使えば己の特徴に近しい者に、変身できる。魔法の様に、自分以外の誰かの認識を上書きするものじゃあないから、アンチマジックの影響を受けない。ただし、こいつは肉体改造にも等しいからな...」

 なるほどって声が漏れた。

 やっぱり翁が、推測してたものらしい。

「では、変身できる者も限られるな」

 そういうこと。

 性別の変化も、外見上の変化まででしか変容しない。

 中身、内臓の器官が変化することは無い。

 ごついおっさんが、ごついおばさんに成る程度だ。

「ふっ...なら、儂には1回で十分じゃな」

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