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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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ソレは、ハトに聞いてくれ 3

 秘密結社との戦いは、半世紀ほどでしかないけど。

 魔界と騎士団との間で繰り広げられている、奇妙で複雑な戦いは数世代にわたる。

 しかも魔界サイドにしてみれば、一方的に支払わされた対価なのだ。


 転移門から多くの同胞を()()に送り出し。

 それぞれの世界で、騎士団と戦った。

 未だに袖にされてるような感覚だが。

 どの時代でも、結社との戦いでは負けていないと、自負する。

 多くの犠牲の上で成り立つ勝利なのだけども。



 森が燃えている。

 多くの獣が逃げる中で、子犬ほどのオオカミが濃い茂みの中で震えていた。

 《蛇目》のアイヴァーが気が付かなかったならば、彼の命はなかったかもしれない。

「こいつは、口汚いババアんとこの?!」

 オオカミに変じて震えてた。

 抱えあげるとより小さく感じ、腕の中で暖かさが薄らいでいる。

「今、ポーションを」

 火を熾して、小枝をくべる。

 個人のみの天幕をくみ上げて、少年に与えた。

 粥も作ってみたけども、治癒水剤くらいしか口にしなかった。

「話したくなったら聞く」

 牧場の辺りが燃えていると思ったから、奔った。

 飼ってたハトが逃げているのも見ていたし。

 警告文を括りつけてあったのも。


 警告に従うのであれば、少年を見捨てなくては成らなかったが。

 すっくと、アイヴァーさんは立つ。

 焚火に照らされた背は大きく見えて、安心感がある。

「――場所を変えよう、()()に見せていいもんじゃねえだろ?」

 焚火を回り込んで。

 茂みの奥に消えていく。



 月明かりにぼんやり浮かんだ野原へ。

 アイヴァーが原の中心に立ち終えるまで、陽炎のような影が待っていた。

「数は、っちぃ... 掴みにくいなあ」

 奇襲されてたら厄介だったけど。

 逆に正面切ってというのもやり難い。

 草を食む音が手掛かりになると思ったんだけど、生半可じゃなく。


 結果、アイヴァーさんは殴られ、蹴られて、弾かれてた。

 飛び出したゴルゴーン族のお姉さんたちにだ。


 ごろん、ごろんって天地を交互に逆転させながら転がって。

 スイカ並みのおっぱいを後頭部に感じたところで、

「大事ないか、オオカミ?!」

 てな手合いで大柄な蛇に助けられたところ。

「お、おう」

 気恥ずかしさと、首にまでかかる心地い圧。

 おお~ぽよん、ぼよんする。

「大事ないなら我から、退かれよ」

 おっぱい揉まれるより恥ずかしいことはない。

 いくら痴女みたいに紐のような帯で隠してるっても、そんなつもりじゃないし。

 今は発情期でもない。


 犬は知らんけど。


 結社の刺客とやりあっているのは、ゴルゴーン族の戦士。

 大剣とナイフの大立ち回りのようで。

 つけ入る隙もない。

「無理しなくていい。そちらは小さき命を、」

 大柄な蛇女の言葉を遮るように、

「斥候が得意だが。これでもオオカミだからな」

 好きにしろと言われるつもりだったんだが。

 案外お節介だったようで。

「子犬の世話に専念しろ! お前がヤれることはそっちだと思うのだがな」

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