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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
397/513

ソレは、ハトに聞いてくれ 1

「商談は纏まったか?!」

 部屋の外にて待機してたアグラが入室。

 実際、彼ら三人。

 置かれている経済状況は最悪だった――そもそも、豪奢な馬車がよくない。それを護衛する冒険者のカラー・チョークも、コスト≒パフォーマンスからして財布の紐が緩すぎた。結果的に慢性的な金欠状態になるところ、まさに“謎の資金供給源”によって騙し、騙しで乗り越えてきたのだ。

「まてまて、それが分かってたんならグレードを落とせよ? 貴族でもないのに()()()()()()()が一般的な常識だろ!!?」

 シグルドさんのごもっとな指摘に。

 アグラが反論。

 かれが口を挟むとは思えなかった、けど。

 そこには彼なりの切実があった。



 つまり。

 ゴルゴン族と妹柱マディヤには“金銭感覚”がひとつ、ゼロ、桁が違うところにある。

 どこかの王妃さまが『パンが無ければケーキを食べればいいじゃない?』なんてのと似ていて、基軸通貨による一般的、標準的な収入力を知らないというのが問題だった。

 じゃあ、教えればいい。

 しかし、ここで難敵であるゴルゴン族が立ち塞がる。


 あ、シグルドさんが顔を両手で覆った。

()()、俺の気持ちを察したか?」

 アグラも同じことで挫折した。

 彼の給料だって未払いだけど、人柄に惚れたので護衛剣士として同行していたし。

 彼自身の貯蓄を切り崩して、ここまで懸命に尽くしてきた。

 が、もう限界である。

「しかし、その“謎の資金供給源”はどうなったんだ???」

 ナシムの涙を誘う演技がはじまる。

 泣き崩れながら、風景が瓦礫にしか見えない窓辺まで這い寄って――

「賢者ブライ・ボルとその一味をメガ・ラニアにて屠った直後から、滞りまして。一体どうなったんですかね?」

 それをこっちが知りたいんだけどね。

 さて、時系列的には《蛇目》アイヴァーさんが、マディヤ一行と公国の重要人物の会合を知った。

 監視してたのはマディヤではなく。

 公国の国防大臣で、焚きつけたという怪しい妖術師って話だ。


 さて。

 その頃の結社は兵力と扇動者のほぼすべてを失った筈だが。

「まてよ?! “金脈”も潰したな」

 シグルドさんが湧き出した、炎を背にした大老を思い出した。

 暗殺者が真面目に正面からぶつかって、見事に撃破してみせたけども、なんとなく禍根めいたものが残った苦いシーンのひとつ。捨て台詞までは覚えていないけども、彼らは“財力”という暴力で島大陸という“()()()()()”を牛耳ろうとしてた。

「あ、それ。中央大陸を中心に、大真面目ですけど思考実験の一環で行われた机上演習です」

 それを早く言え。

 聞いた後と、聞かなかったでは隔たりが出来る。




 思考実験。

 いや、もうその段階は終えている――机上演習も何パターンで繰り返しリハーサルされた筈だ。

 用意周到な連中だってことは、一見、杜撰に見えた計画と阻止しようとした行動の合間に、彼らは望みどおりの結果を得ていた。

 例えば、コンバートル王国の騒動。

 或いは、ラグナル聖国の陶片選挙。

 そして、自由都市の邪神騒動とか。


 燕尾服の少女ナシムからは『考えすぎ』って言葉が出た。


 いや、妹柱は乙女神が世界システムの危機を察知したから、勇者召喚に踏み切ったといった。

 ならば邪神騒動だって――各地の異変に対処する筈だった勇者を一か所に集めるための――いや、憶測に推測を重ねるのは良くない。

「路銀の手配はこちらで行おう。とりあえず、隠れ郷までの道のりだが」


「馬車がいい!!」

 燕尾服の少女は、従者なんだけど?

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