《三本爪》の勧誘 3
「組織の全容から話すよ。グランドクランは“黒水晶”、第一に“紫水晶”、第二には“黄水晶”、第三で“紅水晶”、最後に“煙水晶”で五つの組織。これでもって世界の裏側から、人々を統制しようとしている」
半世紀を賭けて、舞台裏の裾からじっと。
乙女神の妹柱は秘密結社の変化を見てきた。
観察者だった彼女が、紫水晶の次代宗主へ担がれた時。
今までとは違うアプローチに仕向けられたように、感じたというのだ。
そうだな。
組織の再生みたいなノリだろうか。
「つまり、終わりと再生かな?」
不死鳥のように腐敗した構造を取り除き、新たに一段高い次元へ上がるイメージ。
と、なると。
四つの組織は再生のための解体へ突き進んでいる。
ついでに壊した後に操り易い世界も作れるよう、道連れも考えたと。
「信じられないかも知れないけど、世界に勇者が召喚された理由も。ちょっと抜けた姉柱の気まぐれとか、遊びとか、暇だったなんてのでは無くて。世界の仕組みが壊されそうに感じたから、だと思うから。それぞれが単独で事に当たる、時期じゃなくなったかなって」
理由は分かった。
腐敗の象徴みたいな結社だったけど。
彼らも絶賛脱皮中だってことだ。
じゃ、じゃあ。
そこはナシムがずいっと前にでて。
「女神正教の“白”の枢機卿だって聞かされてます」
正教は巨大な組織だ。
その頂点に君臨する法皇という存在は、島大陸のラグナル聖国以上の崇拝の対象だっていう。
もはや乙女神でさえ凌ぐとか。
その信仰力によって神のような力も行使できる。
まさに究極の人間兵器だが。
その法皇には5人の枢機卿が守護している。
聞こえはいいけど。
法皇以外の仕事が多岐に渡るので分業してたら、いつのまにか定着してしまい。
色分けされた枢機卿が誕生してたと言うのだ。
その集中しているものは、予算とか、人事権とか、監察などだ。
で、件の“白”の枢機卿は巫女に関わる人物とされ。
表向きでは女性の司教が就任している筈だ。
「俄かには信じられないが。会った事はあるのかな?」
ナシムは首を振ったけど、マディヤは頷いてた。
「正教の枢機卿であることは間違いないですけど。正直、アレが“白”か否かという区別、判断は出来かねます。あの当時では、しわ枯れた声を男性か女性かと、区別なんてできませんし」
不確かだってことだ。
まあ、ここで上級幹部の面が割れたところで、始末するわけにはいかない。
下手に動けば関係者が何も知らないまま、教会から攻撃される事だけは理解できるし。
非常に厄介な相手だってことだ。
「じゃあ、他の宗主は?」
「いいえ全く。さいしょのメンバーくらいしか見てません」
まあそうだろう。
これ以上尋問すると、傍に控えるナシムが守りに入るだろう。
「では、俺と共に隠れ郷に来るかね?」
その言葉が出るのを待ちわびていたようだった。