表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
394/515

《三本爪》の勧誘 1

 シグルドさんの通り名は《三本爪》。

 特殊な手甲にマウントされたやいばが、三本爪のような傷跡を残すことから名づけられた。

 かつて刃は四本だったようだけど。

 癖だろうね。

 いつの間にか気が付いたら、四本が三本になってたという。

「マジか?! かっけえーな」

 アグラとふたり。

 男同士で意気投合するシーンがあった。

 いつか前までは対峙してたが。

 すっかり呑み仲間だ。

「俺の倭刀にも謂れくらいはあるんだぜ?」

 鬼人だった男の武勇伝。

 いや、その兄の武勇伝だ。



「ふたり、楽しそうだよね」

 って少し寂し気な雰囲気をみせるマディヤがあって。

 燕尾服がチェストの上に畳まれた傍のベッドに少女がある。

 彼女になった従者だが。

「やっぱり混ざりたいですか」

 マディヤにすれば素は、今だ。

 長年貯金してた魔力で少しずつ容姿を替えて、男の子になれて外見相応のやんちゃしてた。

 が、夢も冷めた感じなのだろう。

 溜めてた魔力が散ってしまって。

「う~ん、出来れば」

 肩を落とす少女マディヤも愛おしい。



 回復したナシムがシグルドさんへ改めて。

「ポーション代です」

 布製の包みを差し出す。

 だが、シグルドさんは受け取りを拒否した。

「アグラから貰っている。二重取りになるのは避けたいんだ」


「そうですか」

 口を尖らせる少女へ。

「何故、こちらの連絡手段を知ってたんだ。アグラは単に用心棒で、細かい事はお前さんに聞けと」

 ナシムにも未だ仕事があった。

 やや明るい表情になった娘は、

「わたしたちの一族がオオカミと親交があったんです」



 整理すると。

 ゴルゴン族と魔狼族とは魔界の知己という。

 三女神のひと柱に請われて眷属に入り、魔界から出た一族。

 乱破らっぱとの連絡網に調査の共有などは、ハトで行っているのだとか。

「なるほど、部外者は俺か!!」

 ナシムが慌てたけど。

 シグルドさんが揶揄ってるって気づいてくれた。

「そうなると、アグラが旦那と呼ぶ彼女は?」


「乙女神の妹柱になります。竜を御する少女神は、彼女マディヤさまを指したものでして」

 と、なると。

 旅をしている理由と、結社の内側へ潜った理由が気になる。

 結社の話もアグラが一通り、まあ、勝手に酒の席で話してしまっていた。

 情報の漏洩ってヤツだな。

「郷の最長老が、妹柱さまに請われて名付けられた名が“マディヤ”でして。以後、わたしたちはマディヤさまに付き従って、各地で悪さをする蛇の躾に奔走しておりました。半分は姉柱がひとつ乙女神さまからの変事に対する調査依頼。いまひとつは妹柱さまの趣味の温泉巡りでして」

 その道すがらに、人々を救済してたら結社に声を掛けられたのだという。

 さいしょこそ結社の理想は高潔だったと。

「さいしょ?」


「半世紀前くらいです」

 高度な知識と、身の丈を越えた御業。

 エルダーと呼ばれる種族が遺した神代の御業をも超える知識と技術、そして力。

 継承するごとに劣化せずに精度が増す恐怖。

「ちょ、ちょっと待った。さいしょの結社と今とで違うのだろ?! 俺たちが相手した“紫水晶アメジスト”は、せいぜい悪知恵の冴える人種族でしか」

 ナシムは首を振り。

「アメジストは彼らが創った劣化版、もともと四つあった組織がひとつになって、頂点に君臨しました。五つ目にして最強、最高のグランドクラン。初期メンバーの限られた者は不死も得ているとの事です」

 不老ではなく不死性。

 前者の方が未だ、世界法則から外れていない。

 アンデッドの不死性は聖魔法で覆るものだから完ぺきではない。


 が。


 五つ目の組織は、それをも克服していそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ