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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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《蛇目》の帰還 1

 ウイグスリー商会に向けた足は重い。

 解決と言えば、解決かもしれないけど。

 結果から考慮しても、彼らの助力嘆願に応えることが出来なかった。


 空間転移で()()()も、こちら側へ踏み入れられる技術が結社にある。

 彼らが崇拝する騎士団の力。

 完全な模倣では無いにしても“ある”と仮定して動けばよかった。

 と、反省もしているし。

 考えないようにしてた己の浅はかさに憤慨してた。

 だから、聖都の外に一歩も出ていない足の向けた先が重い。

《糞、糞が!!》



 ナーシリーヤ藩国の第二都市“バスラ”。

 街一番の陽気で愉快な酒場から、左の袖を真っ黒にさせた男が。

 青冷めた表情と共に猫背で転がり出た。

 扉の前で待ってた従者のぎょっとした貌が滑稽だ。

 肩で呼吸しつつ、男は小馬鹿にしたように嗤った。

「如何しました?!」


「大丈夫、だい...いや、大丈夫じゃないな。魔力切れ、マジ、オドがすっからかん。アーティファクトのマナもゼロ。何も残ってない、とんだ間抜けじゃないか」

 従者の手を借りて馬車まで。

 よじ登って、這うように滑り込んで、床に沈む。

 相席の騎士に踏まれて――「アーサー卿? それ、ボクに失礼じゃない」


「おや、未だそんな元気がありましたか。魔術師ガンド卿?」

 あるよって、手で払いのけ。

 ゆっくりとシートへ掛け直す。

 スプリングの効いた最先端ハイセンスの馬車でも、道が悪いとガタガタ揺れるもので。 

 舌を噛まないよう、無口で通す。

 この間が致命的に問題だ。

 野郎ふたり、相乗りのバツの悪さ。

「花が欲しいものだ」


「同感です」

 ふたりは同時に舌を噛んでいた。



 騎士と魔術師は街の郊外にある屋敷へ。

「敵に塩を送るってどんな気分でした?」

 扉を開けた直後に吹き抜けのホールがある。

 中央奥に両脇へと上がる階段があって、1階と2階の間に踊り場があった。

 元々貴族が所有してた外遊目的の屋敷だったので。

 随所に無駄なスペースが多い。

「ガヘリス卿が屋内とは珍しい。まあ、いいでしょう... 最高の気分ですよ、もう本当に最高です。彼らが、大いに勘違いしてくれた事にも感謝ですけど。四ある結社がそれぞれに騎士団わたしたちを裏切っているとが分かりました」

 世界に散っている結社には高潔かつ崇高な目的と、行動力を与えた。

 神代の技術力だ。

 精緻な人体図とか、強力な治癒術式など。

 圧政に苦しみ、貧困からの救いを求める人々の救済――果てにあるは、完全なる世界平和。

 その方法が究極の階級社会だとしても、騎士団は口を挟むつもりはなかった。

「裏切り」


「乙女神の干渉が()()を物語ってました、よ」

 勇者の召喚と聖女の降臨だ。

 アイヴァーさんらにもそれとなく伝えようとしたら、飼い犬たちが手を噛んできた。

 まあ、そんなところらしい。

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