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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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アイヴァーのお使いクエスト 2

 数か月前も、ウイグスリー商会は聖都における大商会のひとつに数えられ。

 大小さまざまな商会が組みする『商人ギルド』の役員だった訳だけど、結社の“金脈”と呼ばれてた組織と敵対したことによって、表も裏の両界隈で一目置かれる存在へと急成長した。

 これらは潰した商会の数も関係する。

 潰し、潰されの仁義なき戦いにの果てにあるのは、妬みと怨みしかなく。

 ウイズリー商会も、その連鎖には逃れられなかったという。



 現在も当主と商会長を務める大老。

 ウトウィック・ウイグスリーという人物は、齢90の大代が見えてきても。

 その精力の尽き果てる様子はなかった。

「俺の()()()()とは仲良くやってくれてるんだよな?」

 彼のには息子たち、その孫にも娘は居ない。

 で、あれば――。

 そう、あたしたちのこと。

 デキの悪いエルフに最大の愛情を注いでた。


 ま、お爺ちゃんにはモテるんだよね。

 あたしは。


 商会長ウトウィック・ウイグスリーは2か月前から、人前に出ることを憚るようになった。

 アイヴァーさんが事前に仕入れた情報ネタである。

 政情には多少なりとも影響はしたけど、直にやり取りするのは嫡男であるし。

 他の息子たちも、各地域の店舗と商業エリアの販路拡大が忙し過ぎて、ウイグスリー商会が他国に与える影響は些末なことと“オオカミ”たちは考えた。

「ええ、手は出してませんけど。それよりも、会長? 痩せましたか」

 そんな世辞はどうでもいい。

 痩せましたかよりも、若返りましたか?の方がより現実的だったかも。

「“呪い”だ、そうだ。――丁寧に呪物まで送り付けてきた」

 2か月余りで50代にも見える姿になっている。

 若返りは、正真正銘“呪い”と同じ類のものだ。

 運命を司る神。

 この場合はすべてを兼ね備える乙女神が、その神秘性を用いて希望者の望みを叶える物語はなしに。

 でも、残る伝承の結末はどれも悲惨だ。

 神は人の尽きない傲慢な欲望に『怒り』で応える――逆光する寿命で卵に()()というもの。

 死ぬことで消滅するなら。

 生が生まれる前に戻るのも消滅に成らないだろうか。




 輪廻は巡るもの。

「で、いや、呪いの解呪が目的じゃないんですね?」

 アイヴァーさんは一瞬迷った。

 解呪すればウトウィック・ウイグスリー氏を助けられる、と。

 それならば、魔術師を呼べばいい。

「察しが良くて助かる。結社の連中は“金脈”と名乗って、市場を転がすことに長けてた者だった記憶している。仇なすとしても、同じ土俵で仕掛けてくると思ってたのは俺の怠慢かもしれねえが。魔法となると、話も違ってくる。商会長が祟られたとなると」

 商会の誰にでも当てはまる。

 少なくとも呪術師には見立てて貰った。

「商会長の座に呪いが?」


「ああ。俺が降りれば解呪されて余命を楽しめるが、60少しの()()()()に業を背負わせちまう。これじゃあ、本末転倒だ。だからよ、頼めるかい? 残党ども根絶やしにしてくれると助かるんだが?」

 解呪は。

 ウイグスリーさんは優しく微笑み。

「俺が受けるもんだ。子供や孫には関係ねえ」

 呪いを解けば、相手にも勘付かれる。

 残り数か月。

 その間に、敵を討つって物語だ。

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