表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
384/511

暗殺者の矜持 1

 シグルドさんらの動向をまるで忘れてた。

 便りがないのは元気な証なんて、そんな言葉があるように。

 虫の知らせもないのだから、彼らに万が一は起きていなかった。


 が。

 アイヴァーさんは軒差しの太い柱に頭を打ち付け。

 なにか念仏めいた言葉をブツブツと唱えてた。

「気持ちのいいものではないんで、ソレ止めて貰っていいですか?」

 両手で顔を覆いながら――

 シグルドさんも詰んでた。


 その軒差しの家人が引き戸を引いて。

「煩いからさ、中に入るなら、入るんだよ! 馬鹿たれどもが」

 招き入れられた家屋。

 土間と境に石積みがあって、奥へ板間がひろがる風景。

 天井へと上がる白い煙と囲炉裏があった。

「靴は脱ぐんだよ?」

 シグルドが土足で板間へと上がろうとしてたからだが。



 この家人は、魔狼族の乱破らっぱとして魔界から、数世代にもわたって潜伏しているものである。

 シグルドや、アイヴァーさんが訪ねてこなければ、だ。

 数十年と待ち続ける日々を送る。

「どうしたよ? そんなシケタ面しやがって」

 煙管の灰を、囲炉裏の中に落とす。


 さて、どこから話したものか。

 自分たちは追跡において天狗になるほどの自負があった。

 奢ってたけど、しくじるほどの度の過ぎたモノじゃないとも思ってた。

 が、結果的に。

「見失ったってか」

 深いため息が家人から漏れた。

 ふたりをして呆れたとかそういうものじゃない。

「結社の奴らが慎重になったんだよ、誇らしく胸を張りなよ」

 おまえらの働きが認められたんだと、と。


 結社とのつながりは短くもないし、太くもないが。

 少なくとも表立って動かなくなったと。

 家人は告げ、ハトが持ち込む依頼書を広げて見せた。

「拠点は()()を使うといい。部屋は余ってるし、今はお前さんらのような、流れのオオカミどもは宿泊していないからな。ただし門限と連絡、そして朝飯だけはちゃんと食っていくんだ!! いいかい?これらの仕事は体資本っていってね。あんたらみたいな現場のエリートには耳タコくらいだろうけども、言ってくれるもんも少ないだろ?! だから、あたしが言ってやるんだ」

 卓上には、木目の荒い皿に骨付きの肉と、粥のような芋が盛られてた。

「うちの畑とささやかな牧場で採れたもんさね」

 肉は燻製にされた非常食のようで。

 アミノ酸が浮いて白くテカッてる雰囲気。

 素朴だけど。


 アイヴァーさんががっついてた。

「この芋、うめぇー!!!」

 吹かした芋を塩だけで練り潰したもんだ。

 塩気の多い食事ではある。

「あんたらは蜂蜜酒でもいいんかね?」

 至れり尽くせりだが。

「――この程度で任務失敗だといって、ニーズヘッグの旦那に泣きつかれちゃあ。一族の評価が駄々下がりしちまうからね。サポートする乱破うちらがきっちり情報を集めて、次の目標を定めてやるから、あんたらエリートさんは英気でも養ってるといいんだよ! で、あたしらの下に舞い込んでくるささやかな依頼を熟してくれると、生活の足しにもなるんだがね」

 まあ、そこが本音のようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ