メラート郊外に冒険者と、光の柱 2
メラート郊外にある廃村。
16世帯、羊と馬に牛、鶏が少々住んでた形跡のあるとこ。
村の周囲に柵があって。
ぐるりと囲んでる痕が残ってる。
柵の土台は石を組み上げたもので、なかなかに頑丈だ。
踏み荒らされてはいるけれども。
畑だった痕跡もあった。
廃村になったのはつい最近と言ったところか。
そんな場違いに、冒険者百人余りと魔獣の群れがぶつかってて。
金色に輝く光の柱は――村の中央広場に立ちあがった訳だ。
で、あたしが肩を竦めてはにかんだ所に。
フレッシュトマトが弾けるような雰囲気で血しぶき。
いやあ、目の前が真っ赤になったのこれで何回目よ?!
マジで。
悲鳴こそ上がることはなかったけど。
臨戦態勢に入ることもない。
なんか慣れた感じのパーティの頼もしさ。
ヒルダさんは獲物の大剣、どこに隠し持ってました?的なのをずらっと、鞘から抜刀すると。
肩に担いで首の軟骨を鳴らしてた。
ミロムさんはあたしの方へ駆け寄って。
「怪我は?!」
「あ、大丈夫。また派手に血が出たっぽい」
とは告げたけど。
彼女の優しい手から治癒魔法の光があたしを包んでくれた。
「先輩!! こっちは当方に任せるです!!!!」
冒険者が相手にしている死霊たちを、教会関係者が受け持つと宣言してた。
ゾンビやグールは数が多い。
確かに神聖魔法が使えるなら、彼らの配置としてはそこが適材って感じか。
しかも女神正教会にしてみれば天敵である、冒険者ギルドに恩も売れるのだ。
メリットは大きいようで。
冒険者たちからは、罵詈雑言が聞こえた。
寄るな、あっち行け、教会の手は借りぬ的な口撃で。
教会からの修道士たちも「押し売りは、勝手に売りつける事から効果ある!!」なんて叫んでた。
どっちもどっちだけど。
双方ともに何をすれば(嫌がらせになるか)分かって行動してた。
◆
偽ネイザー・ゾンビは魔獣を呼び寄せる角笛をずっと吹き鳴らしてた。
デミミノタウロスしか来ない笛になってるんだけど。
ノラ牛の首がお爺ちゃんと、ヒルダさんの腕によってポンポン飛んでるのを見ると。
なんとなく同情したくなる。
と、いうか...気の毒だなあ、と。
「な、なんだよあの化け物は?!!!」
再び笛を吹く。
魔物になってしまった彼にも聞こえる耳障りな不快音。
これが魔獣呼びの笛の音色だ。
うちの獣車を引いてる魔獣には効果がない模様。
「こっちの魔獣が全然、役立ってねえとかありえねえ!!!! じゃねえか」
ネイザー・ゾンビは逃走した。
蒼炎の魔女を追い回すことに躍起になってた結果。
彼も引き際を間違えたのかも。
逃走はしたけども、出し惜しみもしないで手持ちのカードを全部切っていった。
「だが、魔女は逃がさねえ!!」
ストーカーは怖いって話だね。