メラート郊外に冒険者と、光の柱 1
ズッ、どーんってな轟音とともに。
光の柱がひとつ天上高く聳え立った。
見る人が見れば。
神さまを連想しただろう御業だが。
そんな無茶苦茶な方法で送還された、あたしたちの方は無事なんて生易しい言葉では。
近代的な召喚魔法にはちょっとした安全装置みたいなものがある。
距離と時間を捻じ曲げるイメージが空間転移という魔法。
これをより分かり易い形で想像させると。
テーブルクロスをイメージしてみて?
今、右端にあたしたちがいる。
歩いて左端まで行くとしたら物理的に1日かかるとする。
乙女神だけが扱う訳ではないけども、世に伝わりし“転移魔法”は座標の指定だけに気を配れば。
このテーブルクロスの端と端を最短に求める計算が発動するものなのだ。
ぶっちゃけると二つ折りにして重なれば、距離も時間もゼロに近くなる。
ただし、これは着地する地点が同じ平地であればの話。
そう。
適当な高さから放り出されるんだな、コレ。
あたしは、まあ。
聖女ぱぅわ~とかいうインチキ臭い力で浮遊する事が出来る。
後輩に言わせれば、だ。
『それが、乙女神に選ばれし聖女の御業!! 勇者の一件が片付きましたら是非、教会にその血肉、寄付願いたいものです。あと出来ましたら、当方にも特別な~その~ぱ、パンツでも頂けると...今後ともに励みまするぞ!!!!!』
なんて鼻息の荒い解説をしてくれたものだ。
聖女の爪、垢、穢れたパンツに或いは髪の毛でも。
神秘の塊である事には変わらないという。
じゃ、じゃあ。
魔王ちゃんも似た意味でレアなのでは。
話を振る前に、彼女から目つぶしされて――
あたしは半身に負けたのだ。
「それは、セルコットが悪い」
ヒルダさんから呆れられた。
◇
肩幅分に膝を開いて尻もちをついた、あたし。
情けないことに「きゃう」なんて声を挙げて転がってしまった。
デミミノタウロスに殴られても、泣き言ひとつ言わなかった娘だったと自負してたんだが。
ふふふ~ あたしも女の子だったんだな。
「先輩にスカートを履かせると、見せ下着じゃないのが見えるんで新鮮ですけど。チラ見せじゃなく、堂々となると。少しイラっと来ますね」
後輩の視線が太ももに刺さってる気がする。
「だな。あいつの聖水を浴びた者同士としちゃあ、その花園はズボンで蒸らしておきたい気分になる」
言いたい放題だなあ。
魔王ちゃんの手で助け起こしてもらって。
自分の脚で大地に立つ、感覚。
転んだ時に腰を打ったようで。
膝が嗤ってる。
「帆布の半ズボンと、なめし皮のズボンは洗濯中なの!!」
ミロムさんが大きく頷く。
彼女に洗って貰った。
魔獣が引く獣車の荷台にて乾かされている。
足への怪我が極力少なくなる為に、ごわつく生地で誂えた被服なんだけども。
やはり洗濯となると。
力のいる作業だ。
なめし皮のズボンの方は砂で洗って、オイルを馴染ませる方法で干してるとこ。
鎧に近い生地だから。
重量のあるズボンだ。
「スカートに慣れてないのは、みんなの知るところだよね! でも、もう着いちゃったから... 気を引き締めて声出してガンバ...」
すっと、皆の視界からあたしが消えた。
乙女神の座標が間違ってたんだな。
あたし。
また、ノラ牛に殴り飛ばされちゃったよ。




