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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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メラート郊外に冒険者と、光の柱 1

 ズッ、どーんってな轟音とともに。

 光の柱がひとつ天上高く聳え立った。

 見る人が見れば。

 神さまを連想しただろう御業だが。


 そんな無茶苦茶な方法で送還された、あたしたちの方は無事なんて生易しい言葉では。

 近代的な召喚魔法にはちょっとした安全装置みたいなものがある。

 距離と時間を捻じ曲げるイメージが空間転移という魔法。

 これをより分かり易い形で想像させると。

 テーブルクロスをイメージしてみて?

 今、右端にあたしたちがいる。

 歩いて左端まで行くとしたら物理的に1日かかるとする。


 乙女神だけが扱う訳ではないけども、世に伝わりし“転移魔法”は座標の指定だけに気を配れば。

 このテーブルクロスの端と端を最短に求める計算が発動するものなのだ。

 ぶっちゃけると二つ折りにして重なれば、距離も時間もゼロに近くなる。

 ただし、これは()()する地点が同じ平地であればの話。


 そう。


 適当な高さから放り出されるんだな、コレ。

 あたしは、まあ。

 聖女ぱぅわ~とかいうインチキ臭い力で浮遊する事が出来る。

 後輩に言わせれば、だ。

『それが、乙女神に選ばれし聖女の御業!! 勇者の一件が片付きましたら是非、教会にその血肉、寄付願いたいものです。あと出来ましたら、当方にも特別な~その~ぱ、パンツでも頂けると...今後ともに励みまするぞ!!!!!』

 なんて鼻息の荒い解説をしてくれたものだ。

 聖女の爪、垢、穢れたパンツに或いは髪の毛でも。

 神秘の塊である事には変わらないという。


 じゃ、じゃあ。


 魔王ちゃんも似た意味でレアなのでは。

 話を振る前に、彼女から目つぶしされて――

 あたしは半身に負けたのだ。

「それは、セルコットが悪い」

 ヒルダさんから呆れられた。



 肩幅分に膝を開いて尻もちをついた、あたし。

 情けないことに「きゃう」なんて声を挙げて転がってしまった。

 デミミノタウロスに殴られても、泣き言ひとつ言わなかっただったと自負してたんだが。

 ふふふ~ あたしも女の子だったんだな。

「先輩にスカートを履かせると、見せ下着じゃないのが見えるんで新鮮ですけど。チラ見せじゃなく、堂々となると。少しイラっと来ますね」

 後輩の視線が太ももに刺さってる気がする。

「だな。あいつの聖水を浴びた者同士もんとしちゃあ、その花園はズボンで蒸らしておきたい気分になる」

 言いたい放題だなあ。

 魔王ちゃんの手で助け起こしてもらって。

 自分の脚で大地に立つ、感覚。

 転んだ時に腰を打ったようで。

 膝が嗤ってる。

「帆布の半ズボンと、なめし皮のズボンは洗濯中なの!!」

 ミロムさんが大きく頷く。

 彼女に洗って貰った。

 魔獣が引く獣車の荷台にて乾かされている。

 足への怪我が極力少なくなる為に、ごわつく生地で誂えた被服なんだけども。

 やはり洗濯となると。

 力のいる作業だ。

 なめし皮のズボンの方は砂で洗って、オイルを馴染ませる方法で干してるとこ。

 鎧に近い生地だから。

 重量のあるズボンだ。

「スカートに慣れてないのは、みんなの知るところだよね! でも、もう着いちゃったから... 気を引き締めて声出してガンバ...」

 すっと、皆の視界からあたしが消えた。

 乙女神の座標が間違ってたんだな。

 あたし。


 また、ノラ牛に殴り飛ばされちゃったよ。

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