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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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異世界の新年とは、

 自分あたしたちのいる世界が“異世界”だって認識はない。

 ちょっと自然が人類サイドに厳しいなあくらいの感覚しかなくて。

 また、この厳しさも。

 ごくごく普通なことだ。


 国家とは。

 大きく出たように思うかもだけど。

 国家とは、その守護領域にある国民を守るシステムでしかない。

 もともとは、荒野で逞しく生きていた開拓民たちが、肩を寄せ合って生まれた集落から。

 指導者を得て、より豊かに生活ができるよう。

 発展していった先のもので。

 まだ、これでも...


 未発達だっていう人もある。



 さて。

 島大陸を含めた、各地の国家は大なり小なり、新年の祝い。

 宴をもうける習慣がある。


 あたしが知ってる祝祭で一番、華やかだったのは。

 やっぱりドーセット帝国のものかな。

 荘厳な教会に蝋燭が掲げられ。

 不謹慎ながら「ぎゃーっ!!! 教会がーっ、燃えてるー!!!!」って叫んでしまって。

 準備してた教徒の方々を驚かせてしまった。

 あれは、世間知らずもいいところだった。


 司祭長さんからめっちゃ怒鳴られたっけ。


 まあ、やらかしというと。

 乙女神さまに祝福された、(帝国の守護)騎士たちには“酒”と“肉”が自由に振舞われてたことで。

 帝国騎士見習いだったあたしもご相伴に預かり、食っちゃ呑みしてたんだけど。

 先輩騎士に目撃されて、尻を叩かれたっけ。


 あれはアフターケアが良かった。

 叩いた先輩が「やりすぎた」って尻に塗り薬を。

 そのまま――

 あの指太くて気持ちよかったなあ。

「全部、先輩の失敗談じゃないですか!!」

 ん、その声は。

「新年の祝いはすべての国が休日、あるいは7日の間は、戦争も許されない時期になります。教会ではこれを“はじまりの刻”といいます。各地ごとに呼び方も違いますが、おおむねそいうことで」

 どういうことで。

「前日まで紛争中だった国同士も、新年の祝いでは国民に奉仕する必要があるんですよ。例えば暮れに重税を課したなら、“はじまりの刻”の期間中は炊き出しだとか、村落の修繕を行うとか。国家だけでなく貴族たちにも特権階級者はすべて、責任を十全に果たす義務がある」

 むー。

 守られない場合は?

「天罰が落ちますね」

 そんな眉唾なあ。

 敬虔な乙女神教団ならいざ知らず。

 誰が...

「そんな不信人だと、足の小指。角に打ち付けて泣きを見ますよ!!」

 後輩の言葉通りにその夜。

 藁葺きベッドの脚で、小指を勢いよくぶつける。

 小さな天罰だが。

 くそ痛い天罰だ。



 乙女神と祝う新年の話。

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