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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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魔女とネズミとゾンビ 3

 ――祝祷をあげるのです。

 聖女いらなくね?

 先ずはそう感じたあたしの隣に、邪気が忍び寄ってた。

 ムラムラ~、ユラユラ~ってな煙のような気配。

 その気配を魔王ちゃんが払ってくれる。

 しっしってな具合で手で煤払うような感じで、だ。


 くー、流石はあたしの半身はんしんだよなあ。

 もうすっかり。

 あたしが半身はんしん扱いじゃねえか。

「セルコットは何もしなくていいよ」

 甘く囁く甘美な声。

 ミロムさんの腕があたしに巻き付く。

 耳元では恐ろしい言葉が聞こえた気がするけど。

 細い腕からは想像もつかない、剛力で締め付けてくる。


「ちょっと、痛いって。あ、でも待って、これは、あ。うん、気持ちいい、かも」

 気を失いかけたあたしを、後輩がひっぱりあげてくれた。

 締め付けてきたのは植物の化け物。

 甘い香りを放ち、獲物に理想的な虚実を見せて狩るタイプ。

 ミロムさんと、お爺ちゃんの共同作業により、あたしが救出された。

「ちょっと、囲まれたんじゃ?!」

 後輩が叫んで、神殿騎士のお爺ちゃんと、副団長のお姉さんが身構えて。

 聖職者しんぷたちはみっともなく震えてた。

 ごめん、蒼炎の――。


 あたしら魔物に襲われたんで、あんたの救出。

 ちょっと遅れるかも知んない。



 そんな声が届いたわけでもないけど。

 蒼炎の魔女もちょっとピンチが迫ってた。

 未だに魔法の類は使ってない。


 使えるかもって漠然とした気配はあるようで。

 ただし、敵地のど真ん中でキャンプファイヤーに、BBQでもするようなもんだから。

 気が付かれない筈はない。

 仮に、だ。

 蒼炎の魔女に、この世の理不尽すべてを覆す力があったとしても。

 多勢に無勢って言葉はついて回るんだわ。

 だって魔王ちゃんでも、簡易召喚魔法でエルダーク・エルフの使い魔を呼び出さないと、多勢に対抗する術はない。いや正確にはその多勢を退ける為の大技、これに時間稼ぎが必要になる。

 詠唱はしない分。

 イメージを固めるだけの“練り”が必要。

 それでも何十小節もの詠唱呪文を口ごもるよりも早く、組み上げて放つことが可能だ。

 そんな高等な重爆撃に巻き込まれたくはないんで、あたしとしては()でブイブイ言わせて押し切りたいところだ。

 ま、その数が頼りないんではある。



 おっと。

 外が騒がしい。

 ゾンビの奇声――手で口や鼻を覆ってた蒼炎も、何事かと屋根の隙間からこっそり覗いてみた。

 わらわらと集まる死者の群れ。

 うわ~どこから集まって来たんだよって声が出そうになって、必死に堪えて。

 そこへ冒険者たちがブロードソードで応戦してる状況に遭遇した。

 蒼炎の救援が彼らを誘ったのではなく、乙女神の啓示により訪れたのだが。

 あたしのところには啓示が来なかったんだけど?


 ああいいよ。

 きっと出前のラーメン汁で鍋敷きを汚して、御使いの連中に怒られてたんだろうさ。

 で、なんで蒼炎がピンチかというと。

 偽ネイザーさんがデミミノタウロスの群れを、邪神の香炉とかいうアイテムで興奮させて連れてきた。

 この興奮状態と言うの良くない。

 目につく家屋をなぎ倒しながら、冒険者の一群へと突進させてたからだ。

 あんた、ピーンチだよ!!!

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