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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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聖女の進軍 再始動 5

 邪神の張っていたのは厳密にいうとバリアじゃあない。

 通り抜けは容易だけど、何処に出て来るかはランダムってだけの話。

 仮にエリア内にあった()()が、だ。

 自らの意思で外に出ようとすると、元の位置に返ってくるような仕組みになってた訳で。

 これを妖精の悪戯――“迷わしの森”結界という。


 幻覚みたいな魔法の一種だと、近年まで思われてたけど。

 乙女神付の御使いが申すならば。

『空間魔法の原初版です。これの応用になると、任意の場所座標をランダムに書き換えながら、非術者の心を完全に折に来る厄介な代物でして...』と、まあ。楽しそうに話してくれましてね。あたしがぞっとしているにも関わらず、おしっこの原因もとになる紅茶を手配してくれたもんですよ。

 ああ。

 いやだいやだ、排泄なんかしない連中の無配慮なサービスなんて。



 さて、と。

 あたしのもうひとりの後輩、蒼炎の魔女だけども。

 何してんのかなあって思った訳ですよ。

 あたしに激突させてくれたハトは失神してるんだが。

 こいつの足には書簡筒があった。

『助けてクレメンス!!』

 広げても長さ5センチメートル程度の小付箋紙程度の紙片に。

 書ける文字数も限られてるのは理解できる。

 だが、もう少し何かあるんだろ? 普通。


 助けたいのはやまやま、だよ。

 場所を書け、場所を。

 そして状況もせめて裏に書け。

 何がどうなってんか、分からねえじゃねえか。



 ヒルダさんが放心している間に、魔王ちゃんはハヤブサから同じ書簡筒を見つけてた。

 暫くはじっと紙片を眺めてたけど。

「ファイヤ」

 火属性の初歩魔法を唱える。

 無詠唱だけど、術名はイメージの最終確定として条件になるので必須。

 こうやって本来は長たらしい、経文みたいなのと詠唱から解き放たられている訳だけども、彼女の熾した小さな炎は何かを燃やす為ではなく。焙るためのものだった――『助けてクレメンス』の文字が消えると、びっしりと書き記された座標と状況報告が()()に。

 ごめん、蒼炎の。

 あたしがバカだった。


 なるほど。

 これなら仮に敵の手に書簡が渡ったとしてもカモフラージュになるか。

 すげえなあ~ あいつは。

「そこ感心してあげないでください。当方ら、先輩と同じ学び舎で学んだ時に出た課題の一つでした。まことに心苦しいのですけど。ええ、ええ、勿論、おバカな先輩もすっごくすっごーく可愛いと思います。思いますが、魔王先輩の方がひと...いえ賢かっただけのことですので、いえいえ落ち込まないでください」

 えっと。

 後輩がすごく慰めに来るんだけど。

 あたしはそんなに気にしてないんだが。

 ん?

 う?

 あ、えっと... この流れは。

 あたしは泣けばいいトコなのかな。

「セル、蒼炎ちゃんは“メラート”郊外にある廃村に居るみたい。ただ...」

 歯切れが悪くなった。

 掻い摘んだ状況だから、切迫度がイマイチ。

 エルダーク・エルフさんが手綱を操作する魔獣車の揺れの中で、

「誰かを蘇生させたら、敵だったみたいな。ちょっとこの辺りの筆は震えてて読み難い」

 言われた箇所に、あたしも目を向ける。

 あたしが同じ紙片に火属性を向けると、加減なく燃えカスにするので。

 ここはミロムさんに解読して貰ったところだ。

「ああ、ま、確かに読めないね」

 でも、これでメラートに向かう事になったんだよな。

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