武王祭 3
「少年、ちょっと来てもらおうか」
と、とうとう衛兵まで来た。
トッド君は漏らした女の子の足にすり寄る変態として見られ、あたしは襲われそうになっている少女。
ま、エルフだから外見は、10代にも見えるだろう。
自分でもややコンプレックスではある。
鏡を見ると、15歳の頃から成長した様子が見られない。
毎回見る度に驚かされてるんだ、わ。
《まな板じゃねえか!!!》
って感じ。
後輩ふたりと比較しても、童顔だよ、この野郎!!
分かってる。
分かってるけど。
「お嬢ちゃん、大丈夫かい?」
一緒に連れだって歩いてきた男が、豹変したんだねって流れになってる。
間違いじゃないけど。
「洗濯してあげるから、ちょっとこっちおいで」
って、古着屋のおばさんに手をひかれて店の奥へ。
ピンク色のカーテンの奥には不思議な衣類があった。
「これは?」
「ああ、それかい...舶来のブルマってやつさ。とある格闘家たちが、普段の道着として着用してねえ、実は上下があるのさ」
上下?
舶来とは、なるほど。
ブルマって...こんなのもこもこしたもん上も似た材質か、デザインか。
「いや、上衣は木綿の八分丈の肌着みたいな感じでね。防具の下に着るもんだとされているのさ」
おばさんに誘われるがまま、鏡のある部屋へ入る。
ま、コレが更なるファンブルの連鎖ってやつで。
試着室の個室は、鏡だと思わせてたマジックミラーの向こう側とセットになってた。
あたしの生着替えは、対の部屋では丸見えという――“紅の修道女”の鼻息は荒い。
「姐さんがこんなにも大胆とは!!」
そりゃ誰も見てないと思えば、
パンツを脱ぐのに作法のひとつとか考えないでしょ。
鏡を背にして、一気に膝下まで引き落としますって。
んで、丸見えも見えてると思ってないから...
◇
《あかーん!!!!!!!!!!》
吐血。
いや、豪快な鼻血。
後輩が出血多量で死にそうだ。
ベッドの上で悪戯してくるのとは別の、あたしで興奮している。
《ヤバイ、ヤバイ...はかどるってもんじゃない》
スカートの中にツッコんだ腕が激しく上下で動く。
脇のティッシュがどんどん抜き取られて、消費されていく。
《だれが予想した!? 否、予想しようもない!!! 姐さんの子供っぽい脱ぎ方から...あるいわと当たりは付けてたけど。まさか...いやあ、こんなにも躊躇なく当方の命を奪いに来るとは思わなかった》
追加のティッシュ箱を要求。
店主に“金貨1枚”のチップを与えた。
「毎度」
「で、もう2枚渡す故、この子の脱ぎたてパンツを!」
お客さんも好き者ですねって、誉め言葉を甘んじて受ける。
生着替えショーでのチップは、銀貨5枚。
出演者の子の持ち物は、銀貨10枚からの相場がある。
また、出演者に飛び込みは存在しないものだけど――後輩の手配により、あたしは飛び込みで後輩の罠に落とされた。
暫くすると、あたしのパンツは彼女の手に渡る。
《姐さん、あんたどんだけ漏らしてんだよ》
水を含んだ雑巾のように捻じれば、吸った分の小水が吐き出されるはず。
数十グラムのパンツが、数百いや1キログラム単位まで重くなってた。
◆
で、別行動になったトッド君は。
商業区保安待機所の取調室にあった。
ま、女の子に暴行を働こうとしてた現行犯だから、冒険者ギルドに登録しているチョークを見せたところで釈放までの道程は長い。しかも、目撃証言の中には、怖がらせて涙ながらに漏らすよう強要したという、悪質な手口の報告まであった――これは後輩の仕掛けた罠であるが。
「だとよ...暫くは臭い飯でも食っていこうか、兄ちゃんよ?」
「ええ?!!!!」
って、トッド君の叫びが木霊してた。




