聖女の進軍 再始動 1
鎧を脱いだ修道士と、騎士団所属の2名。
後輩と、あたしが石畳の上で正座させられてる光景。
シュールだ。
折檻するはミロムさん。
道徳というのが服を着て歩いてる、普通家庭の一般的常識という点において。
お爺ちゃんや、ヒルダさんに師匠よりも、わりと正常な線引きがされてて。
えっと、この辺りで言うと...
カルマ値ってヤツだね。
善性が高くてMAX100としての63くらい?
いや、平均か。
「何、言ってんです先輩!! 教会でもそんな徳の高い人いませんよ」
後輩が教会の内部事情で、ミロムさんの善性について語る。
なるほどね。
教会には道徳を説ける者がいないと。
マジかよ、この世界ダメじゃんかよ。
色んな意味で。
ちなみに聖女のあたしは悪性で33。
くそー平均行きたかったなあ。
魔王ちゃんは“0”だった。
善性でもなく、悪性でもない無、いあ、中道路線?
魔王ちゃんって何?
殴られた。
「セルのバカ!!」
魔王ちゃんのむくれっ面もかわいい。
何で殴られたかは分からないけど。
うーん、可愛いから赦せる!!
◇
さて。
身支度を早々に済ませると、あたしらの天幕跡地にお宝が遺されてた。
貴族の邸宅や市庁舎に、倉庫街から漁りまくった金品たちで。
きっと、あたしたちと別れを惜しんでくれているのだろう。
なんだかキラキラと光ってるように思うんだが。
「気のせいだよ」
むしろ気の迷い。
修道士がインナーに金貨を忍ばせようとして、ヒルダに押収。
「野郎の竿に触れた金貨なんか触りたくもないけどな。この一枚が祟ってPT全体に悪運が憑いて回ると、不運体質のセルコットの財布が余計に死に体になっちまう。な、もんで...墓場泥棒みたいなせこい真似すんじゃなく、カネくら貸してやるからカジノか何かで勝手に増やしやがれ!!!」
啖呵の切り方が男らしい。
サバサバとした雰囲気。
いやあ、やっぱりヒルダさんだよねえ。
「ま、兄貴としちゃあ妹が、何処の誰とも言えぬ男の股座に腕突っ込んで金貨をまさぐってた時点で卒倒しそうな光景だったんだが...こんな生臭、カネを恵んでやる必要もないだろうに。俺がこの場で埋めてやるってばよ!!」
師匠がキレた。
そうだよなあ、お兄ちゃんだもんなあ。
妹が皮手袋越しとは言え、竿握ったかもだもんなあ。
「握ってないよ?! えっと...」
「触れ、いや先っちょです」
「殺す!!」
両手をぐーぱー握り直してる師匠。
聖女の進軍だけど。
どうするよ?
結果、もう1日廃墟で過ごすこととなった。
修道士は全員、連帯責任という形で殴られている。