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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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世界を創った者 3

 燕尾服が戦装束だというナシムは、マディヤの変質にはさほど驚きもしないで。

「マディヤさまは、マディヤさまです」

 当たり前のような事を吐いている。

 甲斐がしく世話を焼いて、背中を流し、脇から下乳の汗を拭う。

 ついで拭った手拭いに顔をうずめてた。

「この変態娘が!!」


「なんです、急に?」

 邪魔しないでください。

 吸引して成分の補給を、と――。

「旦那が旦那だってのはオーラでわかる」


「なるほど怠け者でも見える色があったんですね」

 沈黙は時として悲しくなる。

「だが、ありゃ元来の姿じゃねえのか? バランスが崩れてるにしても。そろそろ体内を巡るオドが元の回路に流れる頃合いだってのに。......丹田を刺激しても、消費量に応じた回復が見られねえとすると」


「ミジンコの癖に勘がいいんですか? それは驚きです」

 やっぱり何か知ってるサイドだった。



「丹田?」

 また、其処からか。

 アグラの不機嫌そうな色を見て、マディヤがやや凍り付いてる。

 そんなに長い付き合いじゃないけど。

 和装の男は、青年の姿だったマディヤが()()島大陸に渡る時に。

 護衛として雇用した強者である。


 つまり見惚れた訳だ。

 腕っぷしと度胸の良さに、だ。

「丹田はな、こう下の腹の方の」


「下っ腹にある子宮?」

 否定するのは何回目だ。

 首を横に振って――と、よく見れば沐浴中の所作の最中。

 よく熟れた乳房は瓜のように瑞々しく。

 桃色の艶やかな花が、二輪。

「いや、そこは丹田な」


「どーでもいいですけど、ミジンコ?! 見過ぎですよ」

 燕尾服の世話焼きどもと、マディヤの関係をもう一度正す必要がある。

 そして、彼のいや、彼女の体質に対しても。




 秘密結社に勧誘され、時代の宗主となるべく教育が施されたのは。

 正直、あまり記憶が定かではない。

 ナシムの一族はとある巫女の者たちだという。

 天界を支える柱、まあ、つまり乙女神とは別の面の神とでもいうか。

「ぜんっぜん違う、女神さまです!!」

 水と大地を守護する女神ってのは、島大陸このあたりでも聞くことは無い。

「まあ、待て待て。そう食ってかかられると困るのは、旦那の方に成っちまってるぞ? 抜け駆けして旦那のもち肌にペタペタと、不謹慎にも障りまくってセクハラ働いてたお前さんだ。どさくさ紛れに乳でも掴んで揉みしだくつもりじゃあ、なかったろ」

 図星めいた取り乱しようだ。

「水と大地の守護となると、少なくともその女神さまは竜を使役できるか、眷属を持ってるって事に成るんだが? まさか嬢ちゃんは鱗の無い竜人族だったりするんかね?」


「え? リザードとか蜥蜴と混同ですか」

 唾を宿の窓から外へ吐いて捨てた。

 軒下の方では上階から唾が降ってきたと、大騒ぎになってたようだけども。

 アグラとナシムのふたりの間でも静かなバトルが...起きてた。

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