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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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世界を創った者 1

 マディヤの変化は本人だけのもので。

 たわわを細腕に載せてみせて、

「存外、糞重いのな?」

 肩にではなく、首が凝る。

 なんかこう、重すぎて自然に猫背になる感じで。

 いや、背筋を伸ばすと付けてないのがバレるんで、猫背になる。

「――もう」

 ナシムが自分のことのように恥ずかしがる。

 わかる、なんとなく理解はできる。

 だって付けてないもん。




 ナシムはマディヤに誘われるよう、肉塊を揉ませてもらった。

 悔しいけど、一族の誰にも勝てる者がいない気がする。

「ああああああ」


「なに、吠えてんだよ」

 アグラの細い目。

 視線に気が付いたマディヤは彼の大きな手をひとつ取って、自分のたわわに当てた。

 ナシムの目端に“怠け者”が見える。

「ちょ?!」


「ん、まあ。そうだな...」

 ナシムを見て、アグラの溜息。

「それは女の子に失礼な態度だぞ、アグラ?」

 ナシムの燕尾服は己を律する為の制服であり、戦装束でもある。

 隠しようのないシルエットから暗器が出るから、意表が付ける。

 暗殺者と、気取らせないための装束。


 良く出来ている。

「いえ、あ。まあ、そうですけど...マディヤさまも、そのお心遣いは、ちょっとカチンと来ますのでおやめください。そ・れ・と...いつまで怠け者に胸を揉ませているんです?!!」

 それを言うナシムも手が左乳から離れられない。

「うん、ふたりとも...おっぱい好きだね」

 なんとなくバツが悪くなった。



 秘密結社の知略担当である賢者ブライ・ボルの排除。

「で、旦那。その...変わり果てた姿ですけど」

 マディヤの護衛として、本人からオファーを受けたノラの剣士。

 それが和装のもののふアグラだ。

 東の端にある鬼人の国から流れてきた者で、場末の用心棒だったのを知って知らずかで。

 声を掛けてきた時は、こう小動物のような愛くるしい雰囲気があった。


 時々、姿が変わるようなことがある。

 マディヤの従者は、はじめて遭った時からナシムがあった。

「どうしようねえ、なんか戻り難いね」

 聞いてねえ。

「乳房を支える帯は、この不肖のナシムが全力で整えて見せますので、その他にご入用は?!」

 このやり取りに男であるアグラは加われない。

 いやさ、六っつ上に姉があって、ソレが垂れないように補正してたのを思い出して、だ。

 腰巻みたいなのをと提言したら、ナシムにグーで殴られた。

 以後、振り向き禁止となる。


「旦那、宗主から継げって言われてたんじゃ?」

 壁に向いて、いや、壁に話しかけてる。

 もうそっちにマディヤがいるように暗示さえかけて。

「ボクは見聞を広めると、彼に告げただけで。秘密結社アメジストなんてぶっ壊そうと思ってるだけだよ、まあこう言うのも何なんだけどさ。百害あって一利なしって思わない? 世界の裏から人々を導き統治するなんて、傲慢以外になんだろう」

 座り直して、揺れる乳。

 壁にうっすらと浮かぶ彼女の影。

 もう美の女神でいいや的な美しさがある。

「んーっと、秘密結社あいつらの経典はさ、後付けなんだよね。教義はなしは聞いた、野望もくてきも理想も知ったけど、1ナノミリも心が傾くことが無かった。むしろ反吐が出る」

 上辺だけの感情は常に見せていた気がする。

 アグラに話しかけ、微笑み、涙を目端に浮かべて馬鹿笑いした時も。

 あれは、無表情の上に被った仮面。


 でも、今のは――。

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