武王祭 2
王都のマーケットは色彩に溢れていた。
お祭りの最中というのも関係しているのだろうし、大陸中のさまざまな品物が並んでた。
それこそ舶来品の類もある。
武器とか、鎧とか、美術品に、装身具、泡立ちのいい石鹸も。
「で、何を賭ける?」
「え、えっと...唐突に胡散臭さが醸し出されてますが...」
神の賽を振るのに、タダで得れれるモノはないって、話なんだけどね。
どうも眉唾っぽく聞いてたっぽい。
確かに胡散臭い感じはするだろうよ。
「でも、これの出目は人生に付きまとうものだから、生半可な気持ちでは触れないんだよ。このアイテムはあたしの主神さまのだから...あたしは後で王冠を献上すれば負債がチャラになるけど、神様違いの人は代償が伴う」
「なんか一気に物騒な雰囲気に」
後輩が(あたしの)代わりに頷いてた。
でもね、コレは大事な事なんだ、わ。
「仮にですけど...侮辱しようとかの意図はありませんが、サイコロを振って...ファンブル引いたら」
どうなるのかって?
そりゃあ、賭け事だからねえ。
1)願い事による
2)願い事の達成具合による
3)願い事の為に差し出す“大事なもの”による
あたりからランダムに算出されたオッズに影響されるだろう。
例えば、だ。
願い事Aに対するのが“金持ち”だとしよう。
これの大事なものが“年月”とする。
1)1年以内に達成する
2)5年以内に達成する
3)10年で達成する
4)今直ぐ達成とする
くらいの選択肢があって、これに失敗判定を貰う。
10年くらいあれば、(だれだって)小金持ちにはなったかもしれない、未来までもが遠のくイメージだろうか。そうしたちょっと背伸びするくらいの賭け事でも、舐めると痛いしっぺ返しを貰うのが、あたしのサイコロだって話。
「ってことだと...それを勝負時に失敗しないセルコットさんって凄いって話なのでわ?!」
うむ。
ならば迷わず、あたしを信奉するがよい!!
◇
占いの館の前で、そんな話をするもんじゃあない。
とんだ営業妨害ってことで水を掛けられた。
「あれ?」
「なに...」
「運が良いって話でしたよね」
後輩は水を被る前に逃げてセーフ。
買い物袋を片時も離さない、ポール君も同様に回避済み。
あたしは頭から、かぶって下着までもがぐっしょりだ。
そう、これは森の中でついぞ、衝動に抵抗できずに立ったまま指を走らせたとき――「来たー!!!」って声出ちゃって、噴いたと思ったらおしっこだったという感覚に似ている。
勘違いはあるってことで...
「姐さん、漏らしてますよ!!」
ああ、やっぱり...そうだと思ってた。
水被った時に我慢できなかったんだわ。
で、被れば被ったで誤魔化せるかなと思ったら、上だけ濡れるハプニング。
一張羅のショートパンツ脇から、内太ももを豪快に滑り流れる温かい小水たち。
とんだ失敗だ。
「これがファンブル効果?!」
「いや、まだ振って無いけど、そういう感覚です」
敗北感が癖になりそう。
トッド君やポール君にも、この敗北感を与えてめちゃくちゃにしたい。
いかんいかん、本音が...。
「ボクちょっと、これは嫌です」
ファンブルのせいで、こうなるの抵抗感からだろう。
ポール君の目は自然にあたしの腰に向けられてる。
「でも...」
「でも?」
視線があつい...。
「セルコットさんの、こんな弱弱しいのは嫌いじゃありません。できればもっと近くで、えっと今どんな風に漏れてるかじっくりと見て、焼き付けておきたいって...はぁ、はぁ...」
トッド君に変なスイッチ入ちゃったよ。
ポール君も唖然となる場。
マーケットのど真ん中で漏らした少女に、すり寄る変態って構図は通報対象だから。
後輩の奴、こういう時は逃げ足が速い。
素知らぬ顔で民衆の中に入って、白い目をトッド君に向け――「この変態!! あれは女の敵よー!!!」って陥れてた。
うん。
分からんでもない。
あたしだってこんな面前で、ズボンを脱がされたくはない。




