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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
359/512

乱戦の中で、 3

 最西端の攻略を断念したバウトリィ騎士男の軍。

 守陣の形を変えながら後退して、追撃がなくなる頃合いで一気に転進した。

 その足は脱兎のごとく。

 物資のすべては騎兵の馬へ。

 騎士や歩兵、将軍さえも自らの足で走った。


 これが用兵家・バウトリィ騎士男の策である。




 さて。

 公国軍の本陣あとだけども。

 被害状況がカールトン伯の幕臣たちによってつまびらかされた。

 軍俵米の備蓄は絶望的で、怪我人を癒せる治癒士の多くが死んだ。

「例の魔術師らは?!」

 戦犯で罰でも与えなければ、割にも合わない大損害である。

 踏み殺された公王の死体のこともあるし、あれらの魔法使いがあれば、奇跡のひとつもと考えた。

「いえ、戦死したのか或いは」

 逃げていてくれれば、見つけ出せばいいことだ。

 ひとつ希望が見える。

 公国を陥れた者として裁くことができるからだ。

「バウトリィが戻り次第、撤退する。全軍の半分以上が機能マヒ、散り散りに逃げた同胞も探せない、不甲斐なさに言葉もない。だが、ここはひとりでも多く故郷にたどり着く必要がある!!」



 一方、公国でもひとつ大きな変革が起きてた。

 魔術師だけの帰還による“ざわつき”だ。

 空間転移という御業でもって長距離を跳躍した彼らの前に、レディフェンサーという女性騎士が立ちふさがったのだ。その陰にマディヤの姿見え隠れする――「なんじゃ、お主も来ておったのか?!」

 出迎えご苦労って言葉を掛け損なった。

 穂先や、剣の切っ先が魔術師だけに向けられる。

「何の真似じゃよ? 我らは公王の命にて、援軍を」


「どこからです?」

 向けられるのは、関心のない視線。

 これはマディヤからのもものだけど、女性陣からは射殺すような強い殺意。

「だから、公王が」


「いえ、今の公国の何処から兵を抽出するというのです?」

 見渡せば戦えそうなと言えば、女性騎士位なものか。

 これに国内から女だけで兵を。

 いや、それはもう国じゃなくなる。

「この国は女王の国、あなたがたは害虫でしかない」

 賢者の耳元で囁かれたように感じ、振り向く。

 槍が胸を貫いてた。

 血が沸騰するように熱く感じる。

 痛みよりも熱だ。

「どういう?!」


「お前だって、彼らを利用したのだろ?!!」

 賢者ブライ・ボルが吠えて、マディヤという青年を探す。

 目で、身体を捩じって、槍で突かれて剣で切られても探した。

 棍棒で殴られもして。

 目に入った血の彩で世界を見る。

「そこに居たか、マディヤ・ラジコート!!」

 彼の目に映るの青年ではなく、大人の女性。

 目を疑うような眉目秀麗さがあった。



 マディヤは、軽業師かな?くらいの跳躍で賢者殺害現場から退いた。

 彼女が宿に戻ったのは朝日を迎える頃だ。

 ひと晩。

 頭を抱えたまま、路地をとぼとぼアテなく歩いてたという。

「なんでそんな?!」

 燕尾服のナシムが心配そうに飛び込んできて。

 気が付く。

 おやおや。

「なんか、大きいのが」


「うん、戻らなくて困ってる」

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