表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
358/514

乱戦の中で、 2

 公王の背に忍び寄るハサン。

 串刺し公の異名は、獲物の短槍で首級を串刺して回ることからだ。

 まあ、最も刺しているのはむくろからではなく首級だけなんだけども。


 顎下から入った穂先は頭蓋を少し突き出たとこで止まる。

 目玉はカラスなどの野鳥が突いて持って行ってしまうので、首実検の時が大変だ。

 崩れ落ちる躯から手斧を掠め取ると、切り込んでくる騎士の脇へ槍でひと突き。

 前のめりにグラついた身体へ、手斧で首級を弾き飛ばす。


 慣れた手つきでどんどん奪っていくものだから、雑兵の厚みなんてあってないようなものだ。

 まあ、戦慣れしている戦士ならば、ひとりで千を超えたあたりで。

 呼吸をひと繋しながら、空を仰いでるシーンもあるくらい。

 千人ひと山みたいな影の上に、橙色に盛る炎をまとって立つ戦士たち。

 どっちが狂人かなんて一目瞭然で。


 ぎょろりと公王に向けられた、ハサンの姿をあちこちで見た気がした。

 戦意を失った本陣は、公王を放り出して逃走していく。




「こりゃ、期待外れだったかねえ」

 平原の夜は気温がぐっと下がる。

 ハサンらがひと運動し終えた頃には、寒さで体ががたがた震える頃合いなんだけど。

 藩国のもののふどもの吐く息は白く温かい。

 ギラついた目が獣にも似た彩を放ってた。

「おっと、やっとお出ましだ!! 野郎ども、もう一戦だ!!!!」

 ハサンが焚きつけて、騎士団長が気合注入を促す。

 転がって泥まみれの公王は、逃走した兵に踏まれて圧死した。



 ハイカム候とカールトン伯の両軍(合計)1万の兵は、遅れて帰陣したことに落馬しそうになった。

 本陣にこそ精鋭の5千が置かれて、守戦であれば堅牢な砦なりえた――巨盾兵と剣盾兵のコンビネーションと、短弓兵と長弓兵は中長距離から接近を防ぐ手段となりえる。

 統率する将と、運用する用兵家が公王を説得できれば、負けはしない布陣であったはず。

 下馬したハイカム候は公王を探す。


 躯の山をかき分けて探した。


 ひとつひとつ丁寧に。

 腕の中に引き起こしながら探してた――「馬鹿者が!! こんな戦い方をしよって...」

 言葉に力はなく。

 ただ、かわいい甥っ子を探す叔父の姿。




 城主ハサンと数千の遊撃部隊は、ハンドリー騎士男の5千未満と対峙して、再び逃走した。

 その時の将兵は1千に少し毛が生えた程度であったけど。

 くつかの首級は挙げることができた。


 ハンドリー騎士男の後に現れた、ハフェットル騎士伯との衝突で双方の動きが止まる。

「我が槍の一撃を切っ先で流された流麗さに感服いたした。そこもとは、猛者とお見受けいたす! 冥途の土産としてひとつ、お名前を拝聴いたしとうございますなあ」

 公王には向けなかった畏敬。

 ハフェットル騎士伯の利き手は今も痺れたまま。

 手綱を引いて馬の向きを返る。

「いやいや、こちらこそ見事な槍裁き。お恥ずかしながら今もわが手が震えて御座る...カール・ハフェットルと申す、して」

 城主ハサンは、

「槍のハサンと申す!!!」

 って叫んでた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ