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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
357/510

乱戦の中で、 1

 本陣の全面に剣盾兵を配置。

 そのすぐ背後に重装歩兵を置いて待ち構えたんだけど、複数の穴から飛び出した100にも満たない遊撃は、本陣とは全く別な方向へと走っていった。そうだなあ、身構えてった連中からすると完全な肩透かしになってて『あれ? あれ? あれれ???』みたいなきょろきょろしている雰囲気。

 で、だ。

 彼らが向かったのが、本陣よりも背後に置かれていた()()

 片や厩舎へ。

 片や給仕へ。

 片や...


 本陣を下げていれば、だ。

 後方支援の目的で展開してた軍属でもない人間たちに迷惑は及ばなかった。

 なんて言い訳もできるんだけど。

 軍馬の嘶き。

 短い槍で突かれる馬たち。

 不用意に近づけば獣であるから、軍馬の後ろ蹴りを貰うこともあるので。

 穂先が届く距離からひと突きで終わるよう仕留めてた。


 給仕の為に従軍してた、召使たちは惨殺される。

 兵士じゃないことは分かってるけど。

 やっぱり共に従軍してきたのなら、捕虜になるかもくらいの覚悟はあるだろう。

 場合によっては抵抗もできるから。

 捕虜が取れない以上は殺すしかない。


 で、その他の生活物資だ――口笛が鳴った。

 厩舎にあった馬が愚図な方だったから軍馬じゃないとは思ってたけど。

 荷駄を引くものであると考えれば納得。

 ひろげられた糧食だけでも十数日分は期待できるだろう。

「燃やしてやった!」



「燃やされた?!」

 公王と串刺し公との間で何かが通り過ぎたような感じだ。

 火の手とともに煙が暗い闇に飲まれている。

 オレンジ色の炎が鮮やかに見えた。

 その手前に猫背にみえる人の影――串刺し公・ハサンが仕掛けた遊撃の1000人。

「叔父上は?!」

 ピラミッドかよって巨大な神輿の上から、公王が将軍の姿を探す。

 王の目が届きそうなところに彼はいない。


 そもそも癪に触ってたから、目の届かない。

 最東端の監視塔攻略に回してたのだ。

 これ以上、自分の鼻先で功績を挙げさせないようにしたわけだけども。

 今、裏をかかれたトコで。

 身の危険を感じたところ。

「いいねえ、勘の良さはあると見た!!」

 後方からそんな声が響いた気がした。

 そうだね、後方。


 神輿を担いで兵士たちは、その場で踵を返して砦を背に、遊撃部隊とにらめっこしてた。

 稜線にかかってた金色の帯の日没も、すっかり沈み切って周りは薄暗い。

 しかも、オレンジの炎に照らされて。

 公国軍との決定的な差は()()()()良く見えるかなのだ。

 ゆらゆらと動く人影。

 公国兵はその人影を目を細めた形でしか直視できない。


 悲鳴が上がる。

 背後から。

「敵襲!!」

 本陣の崩壊。

 いや、転進してた陣に合流するように溶け込んだ伏兵たち。

 短弓兵や長弓兵の脇腹を、抜身の脇差で突いて回るだけの簡単なお仕事。


 それで勝手に崩れていった。

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