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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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串刺し侯、ハサン 5

 公王の叔父、ハイカム侯に継承権はない。

 いや、影武者も務めるにあたって返上した――ふた心なし、王室と甥に忠誠を誓うと、家臣になった事を内外に示すために。

 王族である権限を放棄したのだ。

 爵号は侯爵、一般貴族の最高位であり公国の臣下、狗である。

 封地も公国の山の方であるとか。

 ハイカム侯にはふたりの令息がある。


 長男は家を継ぎ、次男は騎士になった。

 良く出来た子供たちで――不平不満を表に出さない。

 嫡子の居ない公王一家と比較されがちである。




 敵襲の号令に嬉々として受け取った公王は、本陣を下げずに前に出していた。

 これで負い目を払しょくできると思ったに違いないけど。

 各地で戦う将軍たちは先ず、耳を疑った。

 二度、同じことを聞かされて。

『全軍! 公王陛下を護る!!!!』

 6人中、3人の将軍が敵兵に背を向けて撤退する。

 残り3人は全兵力を集中させて突き抜ける策に出る――前者は潰走、後者は負けない戦いとした。



 貴族左将軍・ハイカム侯。

 6人の将軍筆頭であり、公王の影武者でもある――公王とは15も離れた老体ではあるのだけど、魔法薬の力で外見だけならば40過ぎの公王と同じ面構えを整えていた。まあ、体力面も同じかと言われると、いささか歳の差があるんだが。

 膂力は流石に武人。

 馬上からのブロードソード、一閃の輝きは見惚れてしまうレベルだ。

 挙げる首級みしるしに構わず、波状で押し寄せる敵兵を蹴散らしながら。

 一度は大きく戦場を離れてから本陣に帰陣する。

 歩兵たちだけなら、方円に陣替えをしながら最小限の消耗で済むのだが。

 巨躯でもある騎兵はもたつきながら転進を余儀なくされる。

 その好機に仕掛けない戦人はいないのだから...


 3人の将軍はそれで潰走させられた。

 数千の兵と、騎士、将軍の首級まで失ったところだ。

 公国を()()()()()、魔法使いたちは本陣にあるんだけど。

 ま、そいつらはいいか。


 平民右将軍・ハフェットル騎士伯。

 ま、平民出身であって騎士爵を叙任したので、今は一応下級貴族ではある。

 ただ、出自の点で平民のからの支持が高いのが現実。

 ハイカム侯の次席であり、国軍の副官的ポジ。

 対立するようなポージングが多いけど、互いによく理解している親友でもあった――転進を急ぐ同出身将軍らの説得や、攻撃の矢面に立ってしまってほぼ、壊滅的な状況に遭遇。

 5千ちかい兵力も大破必死となってしまうんだけど。

 将軍らは敗走して脱出に成功している。


 東将軍・ノクトン伯。

 貴族将軍の家系で生まれ、騎士となり武勲を重ねてきた重鎮のひとり。

 用兵家よりも指揮官としての方に能力値が傾いていて、極めて高い統率力がある。

 カリスマ性って言うのかなあ。

 この人の乗馬姿って物凄くかっこいいんだわ。

 惚れる。

 見惚れる、なんか光り輝いて見える。

「ハフェットルを見捨てるな!! 全軍、突き進め!!!!」

 転進した味方の盾にされた騎士伯の救援を優先。

 将軍は死地からの脱出に成功したけど、ノクトン伯はこれで戦死しちゃって。


 1万の兵を失う。


 西将軍・ハンドリー騎士男。

 騎士男爵の爵号を得た平民出身者。

 ハフェットル騎士伯を盾にした人物で、5千のうち1割半の損失のみで本陣に帰陣している。

 転進で()()?した事例ではあるけど。

 全体から見ると、戦犯扱い。


 北将軍・カールトン伯。

 ハイカム侯とともに突き抜けて脱出した。

 が、途中で馬が壊れて落馬。

 打ち所が悪かったのだろう、帰陣後に治癒魔法の甲斐なく絶命した。

 伯爵には継げる近親の子が無かったので、遠戚に当たるパン屋の次男が相続するという。

 おや? 玉の輿???


 南将軍・バウトリィ騎士男。

 ハフェットル騎士伯の令息を抱える小隊を含む、最西端攻略中の5千。

 堅実な用兵家で、各規模の指揮官に恵まれた人柄なんだけど。

 大胆な策をとくに嫌う傾向がある。

 まあ、その手堅い用兵によって大きな損害も出すことなく、辛うじて開戦と同じ()()でシーソーゲームが成立しているともいえる。彼の下にも、本陣が敵の強襲を受けているって報せは飛んでいるんだけども「将軍!! 何故、助けに向かわれないのですか?!!」って声が上がらないわけがない。

「だから退去する方向で陣替えしてるじゃない」

 囲い込むような陣形から、円陣めいた形に切り替えわっている。

 現在進行形でどんどん新しい形の守陣へ変化してて。

 怪我をした兵は中央へ下がらせ、癒えた者を最前線に送り出す。

 都度、現場指揮官が『盾を高く!』って号令してるので。

 損害は軽微に。

「ボクは負けるのが好みじゃない」

 バウトリィ騎士男は、50過ぎの男性だが、一人称はボク。

 象牙の駒を盤上に置いて、常に鼻頭を擦る癖がある変人だ。

「勝たしてくれないなら、逃げるしかないよなあ」

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