串刺し侯、ハサン 4
砦に残る兵は下の毛も生えてない貴族の子弟と決した。
当然、子弟たちからは反発もあったけど。
城主自らが胸に迎え入れて――「キサマ等の決意を俺らが持っていく。なあに暫しの別れってもんだ。泣くなよ、強く生きるんだ」――ひとり、ひとりの少年たちの頭を撫でながら、説き伏せて回った。
それで聞き分けがよくなる。
いあ、なってくれたんだ。
大人に。
踵を返して。
ぐるりと見渡す“串刺し侯”。
静かに左の胸を叩く。
鈍い音から察するに。
胸鎧は着ていない。
何度も、何度も咽る者が出るまで、暫く叩いてた。
「よし気合注入は完了だ!」
これは藩主国の葬送の儀。
死地へ出る時に皆で皆を讃えて、天原を越える手向けとする。
生き残れば散った者たちの分まで足掻いて生き抜く。
まあ、そんな思いのリレーだろうか。
◇
平原の中でポツンと建つ城。
何もないわけがない。
わざと包囲させて後背を突くなんて芸当だって。
死兵として遊撃に出る為の穴は多い。
もっとよく周辺状況をくまなく調べればよかったのだ。
草を履かせた天蓋をゆっくりと持ち上げる――薄暗いけど、数百メートルの先に一群がある。
『合図は無い、各々、念じて動け!!』
ハサンは言い残すと、城主自ら率先して飛び出してた。
一斉に草の蓋が飛ぶ。
そりゃ、中にはナイフで根を切らなければならない蓋もあったけど。
守備兵3000人余りが地下道から公王本陣に強襲を掛けたのだ。
「ここは敵本陣! 見渡す限りの特別首級なるぞ!!!」
これはいい発破になっただろう。
西端の監視塔攻めは難航した。
こんな筈じゃ無かったのにって声も飛ぶ。
メガ・ラニア公国にとっての苦行である。
先にも、公国の外貨獲得の主な産業は傭兵である。
自国の優秀な戦士たちが各地の紛争で高い戦果を挙げるからこそ、自然と傭兵国家メガ・ラニアが響き渡るのだけども。もうひとつの評判も、公国軍にとって重要なこと――“背神の野良狗ども”は指示を聞かぬ――だ。
個々人の戦闘力が高いために、どうにも送り出されたユニットだけで戦争しがちになる。
自国の用兵家や指揮官は多くいるけど。
その基礎は、兵士個人の力量を数字として見て図っているに過ぎず、柔軟性に欠けていた。
ステータスばかである。
「また、伏兵?!」
二刀流の少年騎士を中心にして、100人の小隊は孤立する。
遊撃の本陣も、監視塔を攻める陣と、神出鬼没な伏兵に対応する小隊へとどんどん分化されて。
収拾がつかなくなってた。
少年騎士は先に、
『敵地故の注意を』と、提言した。
上級騎士のアルファス卿は、直上に進言したけど。
「我らは傭兵国家! 筋肉は裏切らぬ!!!」
って、宣った。
「ダメだ、平原の勝利でイカれやがった」
アルファス卿、最期の言葉になる。