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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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串刺し侯、ハサン 4

 砦に残る兵は下の毛も生えてない貴族の子弟と決した。

 当然、子弟たちからは反発もあったけど。

 城主自らが胸に迎え入れて――「キサマ等の決意かくごを俺らが持っていく。なあに暫しの別れってもんだ。泣くなよ、強く生きるんだ」――ひとり、ひとりの少年たちの頭を撫でながら、説き伏せて回った。

 それで聞き分けがよくなる。

 いあ、なってくれたんだ。

 大人に。



 踵を返して。

 ぐるりと見渡す“串刺し侯”。

 静かに左の胸を叩く。


 鈍い音から察するに。

 胸鎧は着ていない。

 何度も、何度も咽る者が出るまで、暫く叩いてた。

「よし気合注入は完了だ!」

 これは藩主国の葬送の儀。

 死地へ出る時に皆で皆を讃えて、天原あまはらを越える手向けとする。

 生き残れば散った者たちの分まで足掻いて生き抜く。

 まあ、そんな思いのリレーだろうか。



 平原の中でポツンと建つ城。

 何もないわけがない。

 わざと包囲させて後背を突くなんて芸当だって。


 死兵として遊撃に出る為の穴は多い。

 もっとよく周辺状況をくまなく調べればよかったのだ。

 草を履かせた天蓋をゆっくりと持ち上げる――薄暗いけど、数百メートルの先に一群がある。

『合図は無い、各々、念じて動け!!』

 ハサンは言い残すと、城主自ら率先して飛び出してた。

 一斉に草の蓋が飛ぶ。

 そりゃ、中にはナイフで根を切らなければならない蓋もあったけど。

 守備兵3000人余りが地下道から公王本陣に強襲を掛けたのだ。

「ここは敵本陣! 見渡す限りの特別首級なるぞ!!!」

 これはいい発破になっただろう。










 西端の監視塔攻めは難航した。

 こんな筈じゃ無かったのにって声も飛ぶ。

 メガ・ラニア公国にとっての苦行である。


 先にも、公国の外貨獲得の主な産業は傭兵である。

 自国の優秀な戦士たちが各地の紛争で高い戦果を挙げるからこそ、自然と傭兵国家メガ・ラニアが響き渡るのだけども。もうひとつの評判も、公国軍にとって重要なこと――“背神の野良狗おおかみども”は指示を聞かぬ――だ。

 個々人の戦闘力が高いために、どうにも送り出されたユニット()()()戦争しがちになる。

 自国の用兵家や指揮官は多くいるけど。

 その基礎は、兵士個人の力量を数字として見て図っているに過ぎず、柔軟性に欠けていた。

 ステータスばかである。

「また、伏兵?!」

 二刀流の少年騎士を中心にして、100人の小隊は孤立する。

 遊撃の本陣も、監視塔を攻める陣と、神出鬼没な伏兵に対応する小隊へとどんどん分化されて。

 収拾がつかなくなってた。


 少年騎士は先に、

『敵地故の注意を』と、提言した。

 上級騎士のアルファス卿は、直上に進言したけど。

「我らは傭兵国家! 筋肉は裏切らぬ!!!」

 って、宣った。




「ダメだ、平原の勝利でイカれやがった」

 アルファス卿、最期の言葉になる。

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