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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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串刺し侯、ハサン 3

「俺が軍を動かす主将なら、憂いを各個撃破する」

 城主ならそう言うだろうし、ハフェットル騎士伯も同じように宣う。

 監視塔には100人程度の守備兵力がある。

 公国軍が斥候を出して確認したところ――。

 分散配置された()()の拠点は、20か所以上となり。

 見つけられないタイプまでも考慮してしまうと、もう何処から出てきても可笑しくない、とか。


 捕虜とした合従軍の参加騎士は高笑いして。

「キサマ等は、砦を越えて藩都へは行けぬのさ!!」

 啖呵切って見せてた。

 公王自らの吟味もあってか、その場で首が飛んだみたいだけど。

 将軍のひとり、ハフェットル騎士伯は捕虜の扱いに溜息で返した。

「切り捨てるのが早すぎます」

 大した情報は無かったが、身分は高そうだった。

 助命をエサに外交政策にでも使えた可能性だが。

 公王の聞く耳を持たぬ姿勢は、もう頑固というほかなく。

 将軍として活躍している叔父に嫉妬しているような節も。


 ハフェットル騎士伯の悩みは尽きない。

 いや、彼を中心に平民出身の成り上がり騎士爵の将軍ふたりも加えて。

 悩みどころか不安しかない。



 ルセラ砦の城主が“串刺し侯”で知られる侍大将だと知れ渡ると、公国軍に緊張じゃなく恐怖が奔った。

 メガ・ラニア公国の外貨収入は、自国民を傭兵派遣で獲得している。

 その傭兵稼業の先で、時として背を預け、または逆に敵として対峙したりと“串刺し侯”と関わった者は少なくはない。ショートソードと手斧で戦う公国の戦士だって、戦場では“背神の野良狗おおかみども”って蔑まれ恐れられてた。

 乙女神を信仰しないだけで、神に背く者というのは大袈裟というか。

 差別的なことだけど。


 唯一神の信仰が当たり前の世界では、背神は大罪なんだわ。


 さて。

 守備側は、各監視塔に伝令を飛ばす。

 目に見える“塔”は30余り。

 あとは地下に。

 公国が放った斥候たちの勘働きは正しかったけど。

 平原特有のウサギのような習性だ。

「監視塔より、報告!!」

 塔の先に光源があって、これを規則的に明滅させることによって()()とする。

 ここに暗号は、まだ複雑すぎるけど。

「ワレ、会敵ス」

 どよめく本陣。

 監視塔は目障りだが、分散する兵力にも注力が必要になる。

「敵の情況は?!」

 幕僚のひとりが望楼の登頂へ問う。

 伝声管でも走ってれば、もっとクリアに聞こえてただろう。

「薄暗さに距離がありますが... 僅かに敵方本陣が薄くなったように感じられます」

 日没まであと僅か。

 西の奥にある稜線に太陽の金色帯がかかっているように見える。

 見上げる空に星の瞬き。

「う~ん、詩的な情景だ」


「城主閣下」

 緊張感と、諭される。

 照れながら望楼に戻って、幕僚すべての詰めた兵士を見渡してた。

 ぐるっと回って士気の高さの再確認。

「ああ、これならイケそうだな」



 わたしたちの小隊を加えた臨時の大隊は、砦より最西端の監視塔攻略に回された。

 何十万って数の大軍じゃないわたしたち。

 明らかに過剰反応のような気がしないでもないけど。

「斥候を飛ばして知り得た情報では、常駐兵は100人らしい」

 アルファス卿がとくとくと語る。

 小さくか細い声なのに、すっと心に落ち着きを与えてくれる。

 普段とは違うトーンの声。

「では?」


「伏兵の可能性が指摘された。こんな何にもないトコに監視塔だ、その周囲に兵があっても可笑しくはない(下唇を甘噛みしながら)、故に千を超える遊撃部隊が組まれた」

 小隊を囲む他の騎士から『しぃー』って音が聞こえる。

 黙れって意味だけど。

 アルファス卿は最後まで、小隊の仲間に仔細を伝えてくれた。

 攻撃が始まれば、自分の身を守る事で精一杯になるからだが。

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