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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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串刺し侯、ハサン 1

 ルセラ砦の櫓から警鐘が鳴らされた。

 牛が首から提げている響の鈍い鐘が櫓にあって、櫓の真下に詰める兵舎にだけ届く。

 そこから駆け出した兵士たちが、教会に飛び込んで城塞すべてに危機を知らせる流れだ。



 長弓による狙撃で、櫓にあった兵が直下の地面に堕ちた。

 平原で戦があったから臨戦態勢のままで。

 兵のすべてが軽装ながら甲冑を纏ってた。

 が、その重さが仇になって落ちた兵士は、皆、絶命している。


「盾を掲げよ!!」

 号令が奔る。

 やぐらの間隔は20メートルづつ。

 腹から下には厚く硬い木版で覆われ。

 膝をついて屈めば矢を弾ける構造だが、高層にある利点を損なわれては意味がない。

 だから腕に提げたスモールシールドで、急所を辛うじて守りながら立っている。

「どうだ?!」

 小姓たちが主人に外套マントを着せようとする行為から逃れながら。

 城主ハサン卿は城壁まで上がってきた。

 さすがに此処まで来ると、赤いベルベッド地の外套は目立ちすぎる。

 小姓たちは外套を素早く丸く包むと、壁の下へと下がっていった。

「お付きの小僧たちには可哀そうでしたな」

 砦の騎士団長。

 兵卒から()()()にまで出世した武人。

 身体の見えないところには傷ばかり残ってた。

「藩主に謁見となれば着飾ることもやぶさかではない。が、こと戦場では『この首、高ぉーつこうぞ!』なんて目立つのも甚だしい外套なんぞ、肩から下げられる筈もない。俺には自殺願望はないんだがなあ」

 とは言っても、宗主国が異教徒狩りに引っ張り出す兵の中に、彼ハサン卿はある。

 藩主国無類の戦バカという生き物で。


 獲物の短槍を背に4本、両手に持って参じるという。

「櫓に上がってみれば」


「止めた方が」

 眼下の小姓よりも、城下の兵士たちに肝を冷やさせる。

 狙撃される櫓に城主が上がったら。

 気が気じゃなくなるだろうなあ。

「心配するか? 騎士団長おまえでも」


「しますよ、冷血動物じゃないですからね」

 戦が始まる前に城主が狙撃。

 シャレにならない。

 それで戦意が激高するのは、矢を受けても大事なかった時だけだ。

 あたり場所が悪くて一命を取りとめても、緒戦の流れをぐっと相手側に持ってかれてしまう。

「ま、確かに死んじまったら」


「縁起でもない」

 流れ弾を槍先ではじき返す。

 怒号? いや、神がかった戦技に兵士が沸いた。

 響き渡る歓声だ。

 地響きみたいな。

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