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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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武王祭 1

 大陸全土から人々が集まる。

 国を代表する剣豪、開催国を牽制するための隣国や、女神正教会からも神殿騎士などが参加している。

 開催期間は20日あたりで、メインである武術大会は例年通りであれば、10日より後ろになるだろう。

「殆ど、祭りの方がメインなのだな」

 マディヤも()()()は、はじめてだ。

「引き籠っていたからな、こういうのは確かに新鮮だ」

 大館主ろうじんの目からは、青年が対人能力に欠けたタイプには見えない。

 引き籠りがブラフか何かで、或いは隠語じゃないかとも疑ってた。

「どうやら未だ信用されていない様子だが、こちらの世情には疎いってだけにしておこうか?」

 ってマディヤは、疑われていると思しき目に応える。

 老人も、見透かされたと思って――「いやいや、ここにきて二心があるわけではない。い、いあ、全くいらぬ詮索を抱いてしまって申し訳ない」

 老人の低姿勢は本音からくる。

 青年マディヤに茶を淹れてた、少女執事が戻ってくる前でよかった。

 もしも、彼女がその場に居合わせていれば――

 腰に提げた剣が空を切っていたかもしれない。

《ナシムは忠実だが、忠犬過ぎるきらいもある》

「ところで、くだんの武王祭なのですが、何の謂れがあるのでしょうか?」

 おっと、そっから。

 大館主ろうじんの目が細くなる。

 別室から鼻歌交じりに執事が帰って来た。


 和服の男は、市内観光中で留守。

 少女執事が入室すると、妙な空気になってた。



 武王祭――5年に1度行われる、武人にとっての誉れ高いお祭り。

 ざっくりいうと、当代随一の武人を探し出そうって話で――どっかの時点で、勇者選抜から“地上最強の戦士決定戦”とかいう方向に流れていった。で、結果、商魂逞しい商人たちが出張ってきたら、こんな騒々しい祭りになりました。

 どんな時も商人さまが引っ掻き回すのだ!

 あ、でもね。

 パーティに商才ってスキルがある仲間がいると、便利なわけ。

「王都でぶらり剣術修行でもって寄ったら、何でセルコットさんたちの買い物に...付き合わされてるんです、ボク?」

 ポール君です。

 剣術修行が嘘だってのは分かってる。

 盗賊ギルドに寄ってから、街中をぶらついてたら彼とばったり出会った。

 って、偶然なわけがない。

「旅は道連れ...」


「そのくだりはもう、終わったんじゃ」

 終わった?

「ええ、もうサブタイトルは“武王祭”に変わってますね」

 って後輩が告げてきた。

 そっか、

「でもさ、商才持ってるのポール君だけでしょ!!?」

 にわかに険しい表情になった。

 取得スキルは、身内でも内緒にしているらしい。

 ま、知られれば...あたしたちと同じことを、団員同士で迫るからだ。

「トッド、売ったな!!」

 彼はあたしの背に隠れる。

 男の子を隠せるほど大きな背中じゃないけど、

「いやいや、トッド君は無関係。あたしが“鑑定”()()でのぞき見に成功したから、ポール君が来るのを待ってただけ。すっごい偶然に見えるでしょ」

 でも、偶然じゃない。

「姐さんの賽の目は、姐さんの感情いしで、確定の未来を引き当てるんです! それも高確率クリティカルの結果を引き当てる...チートみたいですが、代償もそれなりに大きいんですけどね」

 ポール君の目は点だ。

 ああ、わかってるその表情はもう、通過済み。

 普通に聞けば、ただの痛い子だ。

「じゃ、ちょっと振らせてください」


「いいけど...何か賭けるものある?」

 で、目が細くなる。

 ああ、その目もゾクゾクする。

 疑ってる、疑ってる。

 もっと、その目で見て!!

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