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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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肩ロースが食べたい 3

「ねえ、お爺ちゃん?」

 目端にあったからお爺ちゃんに声を掛けた気がする。

 なんていうかねえ。

 この身体に、あたしが居ないような気がするんだ。

「大丈夫だ、紙一重、な」

 そ。

 この紙一重ってのが抜刀による、振り抜いた結果まで。

 ヒルダが制止を振り払ってあたしに近づいてたら――縦にまっぷたつ。

 もう、奇麗に割れてただろうねえ。


 あ、えっと。

 蘇生は出来ると思うけど。

 先述どおり断面は最悪なので、彼女の露出する部分に縫い目が見えてたかもしれない。

「や、マジかよ!!」


「おお、マジマジ」

 黒い茄子こと。

 あたしがビビってチビり掛けた、ヒルダに微笑んでた。

 けろっとしてるあたしは、皆をホッとさせるんだと。

 うーん、そういうマスコット的なのは悪い気はしないなあ。



 心、ここにあらず。

 とは言ったものだが、あたし()あたし()俯瞰して見ているとしたらどうだろう。

 気分的には気持ちのいい物じゃあ、ない。

 けど。


 何度も殴られた結果。

 なんか出ちゃったっぽい感じがする。

 尻尾でも付いてれば、ひっぱって引き戻せるような気もしないでもないけど。

 あたしがいない、あたしは冴えてる感じだ。

 身体()そう感じたっぽい。

「じゃ、もう一本の“あんよ”も切り飛ばしてやりますか!!」

 流石に引き攣るよな。

 野牛に戦意があろうと無かろうと。

 散々、遊んでくれたんだ。

 あとはしっかり()()()()に食われてしまえ。

 ってのは、言葉を交わさなくても分かるようだ。




 ミノタウロス・亜種の戒めは解除された。

 が、牛のヤツ観念したんだね。

 これが野生の勘か。

 食われることは前提として、最後にひと噛みいってヤル的な。

「分かるよ、分かる。その潔さに免じて“もう一本”は止めてやろう」

 あたしは突進する牛をひらりと躱す。

 爺ちゃんが見惚れるような体捌きで。

 ミロムさんが驚いて腰を抜かすような雰囲気で。

 ヒルダが仰向けに果て。

 後輩があたしの名を叫ぶ――刹那、牛の首が飛んだ。


 あ、上じゃないな。

 突進した前進先にごろんごろんって、不自然に転がる頭蓋がある。

 おお、勢いと噴水のような血流で頭は、数十メートルは飛んだっぽい。

 修道士と騎士さんらが抱き合って怖がってくれた。

 なんか滑稽。

「み、見事だ! セル」

 お爺ちゃんが惚れ直したとか言ってた。

 いつ、孫に惚れていつ、孫を見放したんですか、爺ちゃん!!!

「飛んでく首と目が合っちゃったよ!!」

 ヒルダさんの居た位置が悪い。

 だって仰向けに倒れたから、飛んでった牛と目が合うさ。

 ま、たぶん。


 牛的には『アレ? オデ...死ンジャッタ??!』くらいの感覚しか無かったろう。


 掌を眼前に、

「ないない、そんなアホな視線じゃなくて。“いつか食い殺されるのはお前らだ!!!”的な明らかに恨み節満載な感じで睨んでいったよ。わたしのパンツがヤバいことになったのは言うまでもなく。派手に漏らした感じがする...セルコットさあ、起こして」

 えっと、ちくびを?

「違うわ!! 腰抜けたから、身体を起こして」


「えー、だってその皮革のズボンの中ってさ」


「う...」


「こう、ちゃぷんちゃぷん、でしょ...ヤダなあ」

 そうイメージ的には水たまりの中にあるヒルダを助け出す感じだ。

「私だってこのままは嫌なのー!!」

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