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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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肩ロースが食べたい 1

 異界の魔獣こと、お犬さまだが。

 凄まじい反撃に出て...。

 エルダーク・エルフさん4人を退けてた。

 多分、邪神とのパスが繋がった結果だと思うんだよね。


 神獣としての片鱗が漏れ出たのかも。

 というチートを身に着けたために、エルダーク・エルフさんらの奮戦も空しく戦線離脱。



 ああ、狗の癖に勝ち誇ってやがる。

 そんなのを見せつけられた“魔王”ちゃんが何するか分からんのに。

 ほら、キレてるよ。

 ボディの素体は、あたしと同じだから。

 色違いの短い髪を掻き乱しながら、

「あんの糞イヌが!!!」

 なんて暴言が。

 まあ、その、言い方ですよね。

 女の子なんだから。


 宥めてあげたいけど。

 あたしは目の前の“牛”になぶられてた。

「いつまでも遊んでられないんだからね?!」

 あ、それ。

 あたしに言ってるよね?

「勿論、この活きのいい具材に言葉なんて掛けないって」

 あーうん。

 フレッシュトマトも見慣れると。

 悲鳴じゃなくて。


 残念そうなうめき声に代わってて。

 ミロムさんも心配そうな表情、態度、気を揉むような雰囲気さえもなくなってた。


 ...だよね。


 不甲斐ない。

 分かってる。

 でも、ぶへつ!!!!

 大見栄切った友人たちには悪いけど。

 あたしの視界は真っ赤です。

 やべえよ、何も見えんのだけども。



 片手の指を交互にペキ、ポキと鳴らして。

 パンツが丸見えなドレス姿の魔王ちゃんが尖塔を捉えた宙に浮く。

 狗の方は、彼女の傍に何もないことを前足で探ってた。

「ないよ、浮遊魔術だもの」

 狗には声を掛けるんだね。

 ちょっと不思議そうに見てたら、叩き伏せられるあたし。

 魔王ちゃんからの惚けた視線が痛い、痛いですー。

「どうして命令が聞けなかったのかな?」

 命令と言うのは、食料の調達とエルダーク・エルフとは喧嘩しない、だ。

 食糧は調達したと強調して。

 眼下に落ちてるエルフの方は、勝手に彼らがちょっかいを出してきたんだと主張した。

「そう。あんたの言い分は分かったわ」

 握ってた扇を閉じて下から上へ振るった。

 風圧が奔る。

 狗の背にあった雲が真っ二つに割れた。

 どうも、空間も歪んで見える。


 痛みはない。

 ただ、左肩からなんというか向こう側がスースーする感じ。

 兎に角軽く感じたので、首をゆっくりと。

 恐る恐る視線が左肩へ向けられた。


 あ、ない。

 声が出ない叫びってのはあるようで。

 左の前足が肩からごっそりなくなってた。

「ところで...」

 魔王ちゃんの顔が怖いなあって感じつつ。

「あんたの肩ロースって美味しいのかしら?」

 こわっ。

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