サマースティプル平原の戦い 3
平原の戦いは、4日目で征伐軍の崩壊とともに決した。
征伐軍には2回の兵が投入された。
が、有効に活用できないまま、瓦解したって話。
◇
本陣は元あった地から1里半ほど下がっている。
そのために予備戦力が投じられ、自慢の重装歩兵の墓標が眼前に広がってた。
ああ、ゴーレムも投入されたけど。
結論から言うと。
焼け石に水。
征伐軍にとっては切り札に違いなかったのに。
黒色騎兵との相打ちが出来たくらいだ。
あの一方的な蹂躙が無くなっただけで――いや、それは単に戦端を開いた序章に過ぎず。
公国に与した結社の魔法士たちによる、支援攻撃が厄介だった。
兵力差がみるみる縮まる恐怖。
あ、逃走した隊が。
「瓦解か」
シグルドさんの姿が征伐軍の中から消えて。
ちかくの森の中にあった。
傍らにアイヴァーさんも。
「結社はこの後、どうするかな?」
もう、平原での戦いに見切りをつけている。
「そうだな。公国の場合はサマースティプル平原を統治下においている藩主国に一戦、挑む気があるんじゃないかな」
総力戦を挑んだ後だから、勢いづけば小国くらいは楽とはいかなくとも。
陥落させられる可能性は十分にある。
「セル嬢には悪い事したなって、気持ちが」
アイヴァーさんは、シグルドさんよりもあたし寄りに考えてくれてて。
なんかいつの間にか。
シグルドさんがドライな考え方になってた。
あたしをスカウトしてくれたのに。
「らしくないですね?」
「らしくない、か。確かに...な。連中の暗躍に気が付き、かつ阻止することが我らの行動理由だ。気づけたとしても数歩先を行かれ、やっと追いついたとしても間に合わない。彼女らのような規格外があれば、この戦いの趨勢は違ってたかもしれないと思うと、不甲斐なくてな」
まあ、それがらしくないって事なんだと思う。
シグルドさんに信条を叩きこんだマスターアサシンとしてのアイヴァーさんらしからぬとか。
深く息を吐き出して。
「藩主国だけで留まるのでしょうか?」
少し先を案じた。
結社がバックにある事は間違いない。
彼らでも兵が無尽蔵に湧きだすような壺があるとは思えないので。
無茶はしないと思いたい。
「無茶か」