サマースティプル平原の戦い 2
乱れる陣形。
想定はしていたけど。
寄せ集めっていう言葉が空しく聞こえてくる。
単独行動に出た騎兵隊は、黒色の敵騎兵に迫った。
――鉄の鏃を弾いた鎧は、剣騎兵のサーベルも跳ね除けた。
まあ、当然だろう。
激しい乱戦に持ち込めても、馬上の騎士はヤれない。
ただ、総重量がある馬本体は、タダでは済まなかった。
あ、折れた。
馬の足が、だ。
勝機は乱戦、双方ともに馬がイカレた。
馬上から崩れるように投げ出され、馬と共に潰れる兵が出る。
「まあ、なんつうか勝負あったな」
一部の黒色装甲騎兵は潰された。
相打ちと言う形でだ。
こちらの軽騎兵も甚大な被害だ。
「なんつうかって、こっちも貴重な騎兵戦力が潰されてるじゃないですか、しかも右翼の歩兵陣地は蹂躙されっぱなし。それを追い回す友軍・騎兵もどういう訳か、味方の歩兵を蹴散らかしている」
同士討ちだ。
これも、征伐軍に仲間意識が無いからだろう。
聖国の呼びかけに参集したが、布陣の差配に不満が無かった物はひとりしてない。
盟主国の方も“面倒”だと思った。
◇
相対する公国は、この一戦に国家の存亡以上を賭けてた。
末代にまで類する罪を濯ぐことにある。
――っは、大義名分だけど。
少しでも豊かな土地に移り住む為に飛び出してきた。
ってトコだろう。
そのために賭けた代償は...。
「剣と盾が構えられる男たち、人口の約半分以上。誰かの息子から、誰かのジジイまでの男衆ってんだから、泣けてくる話ですねえ旦那?」
平原が見渡せる丘陵地に、結社はあった。
いや、マディア一行がだ。
「賢者の爺さんどもは?」
和装の剣士は公国の陣地を見渡してる。
その一翼にて魔法をぶっぱしてる連中を見つけたとこだ。
「本陣の近くですね」
燕尾服の少女。
マディア青年にティーを差し出してた。
「ありがとう、ナシム」
青年は後ろ髪をかき上げ、
カップから暖かい茶を啜った。
身体に染みわたる優しい味と香りで、癒された。
「金脈たちの仕事も満更ではなかったね」
とは、聖国で起きた革命のような出来事だ。
聖金貨の偽造事件と、法皇の権威強奪なんてとこだけど。
あたしたちにすべて阻まれた。
結果的には失敗したことになってる。
けど。
そう、けどって続く。
法皇選挙が起こされたのは事実、暗殺が成功したからで。
盤石だった前体制が壊されたことによる求心力の低下は、新体制が発足された現時点でも。
よく分かっていることだ。
各国のまとまりが悪い。
外交に長い時間を掛けてた前法皇の努力によるから。
ちょっと、ムリが出てきたね。