最近の勇者たちは、何してますか?
異界の魔獣の目を通して邪神の残滓は、いずれ己の脅威となる者たちの評価に入ってた。
いあ、経緯が少し違うな。
魔獣との意識経路は、唐突につながったようだ。
意図して繋がった訳じゃなくて。
その幸運に。
邪神でありながら、神に感謝したというので。
残滓の立ち位置が一気に怪しくなった。
飢餓に追い込んでも死なないしぶとい勇者は、天井からしたたる滴に口を開けて仰向けになってた。
「水は与えてるんだが」
導師たちの呆れ顔。
毒薬も難なく中和する女神の権能。
か、或いは勇者専用の資質か。
何を与えても、
『ぽんぽんが痛い』とか病気にもならんので。
面倒になった邪教の導師たちは、ライ麦パンと水を与えてある。
「とうとう、天井からの滴集めをはじめやがった」
「何が悲しくて雨水なんか啜るんだよ」
たぶん、誰が一番不幸かゲームかもしれない。
◇
その誰が一番不幸かゲームにはひとつ、決定的なチートが。
勇者だらけのパーティには、女の子がひとり。
乙女神の趣味だな。
男ばかり、デブ、ハゲ、ヤサ、ショタってくるとお腹いっぱいになった。
この他に最低でもあと2人は召喚しないと聖女を含めた、ラッキーなセブンズなんていうチームが成立しなくなる。
そんな群れには興味ないんだけど。
神さまの中での“7”は、人々が抱く希望的な意味合い以上に重要という。
ほ~ん。
でだ。
ジジイを加えた後、ビッチの召喚が行われた――囚われの身になってる勇者チームにも彼女はあった。
誰が一番不幸かゲームの勝者は、ビッチである。
「だれがビッチだ、ばかやろう!!」
ジジイに花弁からしたたる蜜を吸われてる時点で、雨水よりも不幸と言うか。
なんか同情されてる。
「なあ、じいさんもビッチのソコ吸うのやめてやれ」
目のやり場に困る。
ジジイとビッチの召喚は、家出少女に今まさに襲います的なシーンの状態で行われた。
もうセットで扱いなさい的な状況だったようだ。
それ、犯罪です。
とは異世界常識でもツッこむ者はなかったけど、行為自体はその場の司教が防いだという。
「でしょでしょ?!」
ビッチはいつも危険に晒されている。
勇者らは互いの信念と正義感を持つ、基本ぼっちの執行者だが。
馴れ合いは、ない。
セット召喚のジジイとビッチが襲う側と、襲われる側なだけで。
可哀そうに貞操の危機が常にあるビッチには味方が少ないのだ。
「まあ、どういう経緯かは知らんが」
「あ、あたしは知って欲しいし、守って欲しいんだけど!!!!?」
か弱いかは別として、女の子だ。
守ってあげてしかるべきかと思う。
ジジイってもハゲの青年並みに腕力があって、腰の一本独鈷の反りと滾りは年齢にそぐわない。
腰だけ無双。
「――ったく面倒な」
ライ麦パンを齧るショタ。
こいつは容赦ねえんだわ。
「ジジイから乗り換えるなら、オレに媚び諂え! それが条件だ!!!」
6人から変な声が漏れた。
いや、呆れたんだわ。
「おめえ、....っ、ませてんな?!」
ヤサな青年は肩に入れ墨を背負う漢だ。
その兄さんもショタの台詞には眉をひそめてた――ショタっても、12、3歳くらいの柄が悪い少年。
乙女神の基準って何処ですか~?
マジで、あの人の人選が分からない。
「需要と供給だろうが?! マセてねえよ、ビッチとだって年齢大して変わらねえだろ!!」
あーって声はあがる。
ビッチの見た目は厚底ブーツ並みのブーストが掛かってるだけだ。
デブのおっさん値踏みだと、
「じぇ、じぇーしーです、かね?」
JC?
ん?
「おめえは、何処の世界の言葉使ってんだよ!!」
てな具合に、腰痛持ちの勇者が責められる。
ジジイの拘束が甘くなり、再び襲われそうになるというシーンの再開だが。
ビッチの貞操は、あたしの救出まで守られるのか。