表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
340/510

働き者たち 2

 魔王ちゃんは何か思うところが。

 異界の魔獣は命令オーダーに忠実に従った。

 己基準で“食えそうな肉”を狩ってきた。


 ただし、魔獣なりに忖度してあった。

 半殺しである。


 んー。

 誤算は、スケールの違いだったんだよ。


 あたしや魔王ちゃんがミノタウロスを()と呼ぶのと。

 ミロムさんやヒルダらが呼ぶには魔獣との差が。

「セル、いつまで休んでるの?」

 鬼だなあ。

 ミロムさんが甲斐甲斐しく、ぎゅーってしてくれてる腕の中。

 おっぱいが後頭部に当たって。

 こう、心が。

「はいはい。ミロムのおっぱいは気持ちいでしょうけど、こいつ絞めるでしょ?」

 ま。

 牛に殴られて腹がたたない...

 は、確かに嘘になる。


 ミロムさんからぎゅーっとされてて。

 安心してたけど。

 うんうん、ちょっとイラっと来た。

 彼女をここまで心配させた、あたし自身。

 野牛の分際も、だ。

「ミロムさん、大丈夫。ちょっと其処で待ってて... 今、解体してくる」

 活きがいい食材をって言葉が抜けた。

 言った気がしたんだけど。

 湧き上がる怒りで失語症みたいに。



 さて、異界の“犬”はもう一つ。

 そう、もう一つ懐かしい匂いを嗅ぎ分けてた。

 それはおそらく残滓である、邪神のものだろう。


 魔王ちゃんの従者にっていう件は、方便ではないけども。

 気になるから自由に動ける時間が欲しかった。

 そして――





 はっきりと知覚した。

 異界の“犬”は邪神の残滓にも、尻尾を振ったのだ。

 あたしを狙ったのも、()()が効果的だと思ったからのようだけど。

 異界の“犬”は、あたしたちを遠巻きに観察してた。

 ふたつの首をもたげながら。

 よっつの眼でじっくり観察する。


 ミノタウロス・亜種。


 選び抜いた最高の個体。

 瀕死の重傷を負わせた後に能力値が、ブーストするような施術が施してある。

 美食家の間では...

 ミノタウロスの肉は最高級品である。

 まあ、狩猟が簡単に出来る相手じゃないし、奇麗に肉を得られるのも難しい。


 故に。

 ミノタウロスの肉は最高級品なのだ。

 難易度SSに類する、グラム/虹金貨1枚相当。

 宝石巻貝ジュエリーシェルの別名が虹金貨なわけで。

 どっちも、多分、目にすることは無いだろうって...


 あれ?


 魔王ちゃんが街の反対側に聳える、尖塔を指さしてた。

 黒い何かが飛んだ気がする。

 エルダーク・エルフさんたちだ。

 異界の“犬”も気が付いて、カッと瞳孔が開いた。

 位置バレしてるのも驚いたけど。

 致死確実な一撃を受けたあたしが。

 平然と、何事もなかったように“牛”の前に出たことにも驚きを隠せてない。


 犬曰く――『アレハ、ナニモノ?!』かな。



 遠く離れた地にある邪神と青年の下にも。

 召喚された異形なる物の気配が知覚できた。

 青年の中にある()()は嗤ってた。

「どうしたんだよ?!」

 馴れ馴れしく接する存在ではないんだけど。

 高揚感って奴だろうか、神さまの残り滓はタメ口を大目にみることにした。

「ふふ、ははは... あの魔女め。わたしの、わしの、いや...われの世界から、神の下僕を呼び出しおった」

 神の下僕と言うのは頭ふたつの()の事だろう。

 神殿には鎖に繋がれた、黒い毛皮の双頭獣が複数ある。


 別の時間軸、次元の話だけど。

 神殿から“お狗さま”が消えたって大騒ぎになってる。

 消えた、忽然と。

 他の狗たちからの証言としては――唐突に光り出したと思ったら、白い手のような靄に首根っこ掴まれて、連れてかれた――めいた話がある。召喚されたことは理解に及ぶんだけど、そうなると誰がって方向に首が折れる。

「仮にも、神の下僕だぞ?!」

 ってね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ