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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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働き者たち 1

 魔王ちゃんが挙げた命令オーダーは、食糧事情の改善だ。

 難しく考える異界の“犬”だが。

「セル、私の半身みたいな...これがアホな子で可愛いの。そ、同じ顔で匂いも同じだから...うんうん、偉いわねえ。もう理解した、ありがとう。でね、この子のアホみたいな攻撃により、...そうなのよ、魔力の量り方を間違えたような()()()()だからね、私も困ってるわけ。で、吹き飛ばした食料はもって、3日分。知れ渡れば、2日ともたないでしょう」

 わりと落ち着いた分析力。

 冷静沈着にして、そつなく才ある者。

 そんな評価が魔王ちゃんに相応しい。

「あら、もう理解してくれたの、ありがとう。じゃ、さっそくで悪いのだけど...()()()基準でいいから食えそうな肉、狩って来てくれる? 引き取りては...エルダーク・エルフに頼むけど? 喧嘩しちゃだめだからね」

 喧嘩になるのか、喧嘩?!

 いや、これは魔王ちゃんなりの躾かも。


 こうして、即日に“野牛”が届けられた。



 あたしの中の感覚から“野牛”だと思ったけど。

 友人と仲間たちは――違った。


 物差しがすこーし、あたしと違うのだ。

 同じエルフであるお爺ちゃんとも違うっぽい。

「これが牛か?!」

 首を傾げるあたしから、後ずさるミロムさんたち。

 いや。

 ミロムさんは、あたしにも『下がるよう』懇願してた。

「おいおい、どう見てもヤバイ魔獣だろうが!!!?」

 師匠は大袈裟なんだよ。

 ふっふふ。

 視界がぐにゃっと歪んだように見えた。

 うん、あたしは...

 殴られて、真横にすっ飛んだ。


 悲鳴が上がる。

 戦慄するなんて滅多にない連中でも、異常なことがあれば。

 単なるスケール違いってだけのこと。


 すっ飛んでったトコにミロムさんが滑り込んでくる。

 潰れたトマトみたいな、あたしを抱えると。

 即座に治癒魔法が掛けられた。

 脱力感のまなこで魔王ちゃんを見てる、あたし。

 うーん、何されたんだっけ。



「イキがいいもん持ってくるとは。私を喜ばせたかったのか、意趣返しか」

 野牛は瀕死だけど、ギリギリのところで生かされてた。

 HPが1割のところで1上がって、1下がるみたいな現象が続き、自然治癒が効かない。

 恐らくはそういうスキルで生かされてた。


 まあ、食料的には、だ。

 半殺しにしておいた方が、長期保存できるわけで。

 異界の魔獣の判断は間違ってない。


 ただ、何もなかった広場に。

 野牛が()()()()時は、目を疑ったものだ。

 この都市には未だ、何か? 居るのかって思わされたほどに。

 そこへ、

「よーしよし。食糧が届いたようだ!!」

 と、魔王ちゃんが聲を上げなかったら、あたしたちもパニックになっただろう。

 いあ。

 現時点では、あたしが殴られて――パニックになった。





 ミロムさんは必死に治癒を掛ける。

「うそ、うそうそうそ... 何で治癒が?!」

 掛けた治癒があたしには効果がない。

 そりゃあ、怪我を負ってないからだし、HPだって1ミリも減ってない。

 殴り飛ばされた時。

 天の声は言った『セルコット・シェシーは、野牛《ミノタウロス・亜種》からダメージ0を貰った』ってね。

 一応、痛みはあったし。

 派手に血も出たけど、ノーダメージだった。

 直ぐに動けなかったのは、あれだ。

 目に自分の血が入ったから。


 海の中で目を開けてた時並みに痛いんだもん。

 びっくりだよ。

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