そうだ、なんか召喚してみよう!
邪神へつなぎが飛ぶことはなかった。
そりゃ、橋頭保である村が燃やされたわけだし。
悪魔の肉が灼けたところで、
「美味しそうって成らないものね」
ちょっと異界から“犬”を召喚してみる。
立ち込める霧から犬が出た。
いや、これを犬と呼ぶには、あたしたちの世界の魔獣が可哀そうになるレベル。
だって、さ。
これネームド・ビーストっぽいよ。
呼び出されたモノは。
尻に付いた尾を嬉しそうに、それはもう千切れんばかりの勢いでぶんぶん回してる。
おいおい、そんなに回したら飛べ。
いや、飛べそうだけど...
四肢でしっかり地面を噛んでやがった。
「じゃあ、はい。これこの世界の悪魔肉ね」
与えてみた。
食ってみた。
吐き出した。
そりゃあ、もう弾丸のような黒い何かが飛んでった。
はい、結論――
「異界の魔獣も食えませんっと。対象者があると、判別に苦労しないわね。セルに食わせたら、私も腹を下すから食材に成らない事だけは理解できたし。そうなると、魔獣は食えるのかしら...ね?」
やや物騒なこと、考えてた?
考えてたよね。
「あら、まだ居たの?」
召喚した“犬”に言う。
魔王ちゃんが還さなければ、そりゃ残るでしょう。
ケモノの方は、だ。
四肢で踏ん張ってるとこ見ると、強制送還はやってたっぽい。
呼ばれた理由が“食えないエサを与える”だもんなあ。
未練か、或いは怨みくらいはするか。
うん。
あたしでも、そこは怒る。
でも、それじゃなかった。
異界の魔獣は従者の末席に加わりたいと懇願した。
いや、そんな雰囲気だったらしい。
「はてー」
エルダーク・エルフは意思疎通が出来る。
魔王ちゃんの肩の辛さを感じて、率先してケアしてくれる。
ほう、巨乳と斯ように重いのか。
悪かったな軽くて!!
「では、こうしましょう」
どうしましょう?!
◇
魔物たちに占拠されてた街“アルーガ”に入った、あたしたちは事実を知った。
この街の真実をだ。
知って、各々が木影、家屋影、物陰で吐き。
あたしだけがその場で吐いた。
「ばっちっ!!」
「ばっちぃーです、先輩!」
「マジかよ?! ここで吐くヤツが」
「無念」
ああ、お爺ちゃん。
かわいい孫の醜態とアホさ加減を再確認してる。
「せめて、ご遺体に掛けないでくださいよ、セルコット氏」
老騎士からも残念そうな視線が向けられた。
いや、なんかこう。
灼けた雑巾みたいな匂いを感じちゃって。
ああ、それね。
魔王ちゃんとあたしは感覚共有しているんだけど。
パスが、ね。
そんで。
彼女が異界の魔物に与える前に、だ。
悪魔肉を嗅いだのが原因。
決して、目の前の惨状に吐いた訳じゃない。
ちがうよ、ちがうから。
もう、何でみんなそんな目で見るかなあ。