いろいろバレた、件 1
「せ、せんぱい?! その、、、、目は?!!!!」
後輩が硬直して動けなくなってたのは。
あたしの利き目が金色に光ってたからだった...
あちゃあ。
やべ、やっちまった。
魔物たちを十分に引き付けるためには、だ。
聖女だと分からせる必要があった。
そこで咄嗟に想い描けた人物像――暗殺者を影から影へと狩る、暗殺者殺しの“金色のサイクロプス”っていう魔人なわけだ。すとんと、イメージできる肖像があるというのは有難いんだけど、結局のところ魔力を練っているうちに、その、えっとだねえ。
寄るんだね。
そっちに。
気が付かないうちにじんわりと、だね。
寄るんだよ、、、、
魔王ちゃんは、手っ取り早く......あたしから、パンツ剥ぎ取りたかったようだが。
パンツを取ったところで。
いあ、匂わないよ。
あれは誹謗中傷だから、勘違いしないで。
チーズなんて、そんなことないから、絶対だよ!!!!
抵抗するようにあたしは、魔力を練ることにした。
高密度の火炎球を放つ為だけのブツブツ、ごにょごにょ詠唱。
鼻が利くなら、
アンテナも鋭いのだと思った訳で。
結果的に。
暗殺者殺しの時と同じように、自分自身に制約を科したんだわ。
デキそうにない難題で縛ると。
賽の目は必ずクリティカルを引かせてくれる。
対価は王冠7枚。
持ってないけど、そのうち支払うってずっと、ツケなんだ。
そろそろヤバイんだけど、どうしよう。
◇
ほーん。
そんな返事ですっとぼけてみた。
ま、話が流れることも無く。
ほーんってヒルダさんが叫んで、
あたしが叩かれた。
頭頂部に手刀が振り下ろされたようで、糞、痛いじゃんか。
目の前に『セルコット・シェシーは、ヒルダからダメージ5を貰った』なんてステータス画面が飛び出て、消えたとこだ。アナウンスはなかったけど、ダメージ5はなかなかに痛かった。
「きゅ~」
「そんな可愛い声でさえずっても、赦しませんよ!!」
そう。
そうだね、確かにそうだ。
サイクロプスでやらかしたと言えば、聖国の夜だろう。
後輩には悪いことをしたような気がする。
「それもそうですけどね、ガムストンさんに謝った方がいい!!」
はい、そこ。
ヒルダさんの言う通り。
今まで忘れてた。
いあ。
記憶のどこかに追いやって。
忘れてしまおう、棄ててしまえばいいとか思ってた。
言われて気が付く、あたしは、もう。
「あなたが、金色?!」
とうとうミロムさんにもバレてしまった。
リーズ王国にも手配書くらいは出回ってるだろう――王国直属の諜報員も仕事だからと、手に掛けたことは幾度かあるし、それはヒルダさんの母国もそうだ。お爺ちゃんの勤め先なのに、いあ、あたしもそこに籍を置いてたのに、だ。
「どおりで倒せないはずですね!」
納得された?! マジ。
「あ、でも... 手配書」
「うーん、冒険者ギルドでもライバル関係の交易商から、相手の荷馬車や特定の誰かの妨害を、って依頼は来るわけで。それはもう依頼の難易度は、青天井しらずの不可能任務に分類される――」
何が言いたいのかな。
「もうね、お互い様なのよ」
後輩は焼かれそうになったことを悔しがってはいても、恨んではいない。
ヒルダさんもあたしと本気で戦ったことに誇りめいた何かを感じてくれてるようだ。
ほ~ん、みんな大人だなあ。
魔王ちゃんは?
「こっちにフルな!」
作戦に一区切りをつけた、魔王ちゃんは...
パンツはき始めてた。