聖女が囮になった、件 2
神殿騎士にしては体力が無いと思ったんだよ。
後のまつりってヤツだけど。
そうなると――
あたしらのパーティは。
極端な前衛タイプって事に成る。
いあ、結局、ね。
あたしが囮に成るからいびつな戦力でもいいんだが。
いいんだけど、納得は出来ないよね。
「何が?!」
師匠が尋ねてきた。
また、顔に胸中の言葉が浮かんでたようで。
「ああああ、いえね。あたしが囮に成るのは折込みですよねっ、て」
「だな」
否定してー。
「なんでだよ、俺は火焔の魔王さんに消し炭にされたかねえよ」
ん?
「話を止めんな、最後まで言い切れ。それから別の話題を振れ!」
「いあ、みなさん...師匠もですが、怪我したり...火傷したら誰が治すんですか?」
考えるまもなく。
「聖女じゃ、ないから心配するな。支援ロールは騎士に扮してた、修道士たちが行うんだと話がついている。火力支援も必要ないから...MPも的確な時と場所を、魔王さんが指図してくれるって、まあ、そんな話に落ち着いてるからな」
マジか。
出来るじゃんよ、あたし。
「お前じゃねえだろ、魔王さんが、だ!!」
有能なのは、魔王さんだ。
いや、魔王ちゃん。
ヤバイなあ、人格が違うだけで出来る子と、出来ない子に分別されてる。
あれ、これは...
「セルコットさんは、要らない子じゃ無いですよ」
優しく包まれるように、ミロムさんの腕の中へ。
頭を撫でてくれる母性愛が注がれ。
「いいパートナー、だな」
師匠の皮肉も、聞こえない、聞こえない...。
◇
作戦は凄く単純だった。
「パンツは脱いでね」
そそ、パンツは脱ぐ。
脱ぐ?! なんで!!!!
「魔獣たちは鼻がいい」
ふむふむ。
「セルは汗ばむから、脱いでると得する!」
ほうほう。
「だから脱いでおく」
うーん?
汗ばむと香ばしくなる、すると...
「チーズ臭!?」
後輩が叫んでた。
しないよ! そんな匂いは出さないよ???!
誹謗中傷だあ。
訴えてやる!!
「誰にだよ、てか、マジでそんな匂いを?」
師匠が退いてる。
いあ、お爺ちゃんまで?
あたのはチーズじゃなく、えっと...ふ、フロー。
「花弁とは言うけど、花はないな。紅が溺れかけたときは...... あれだ磯の香りがした!」
ヒルダさんが余計なことを告げ口。
そんな緊張のかけらも抱かないまま、
戦端が切られたんだっけ。
そ、最初のアレだよ。