聖女が囮になった、件 1
こんちくしょー!!!
くらえー、あたしの最終最大、さ、なんだか分かんないけど。
すっごい技だあああああああああああ!!!
空が灼ける。
いや、太陽が堕ちてきたとも、置換できる。
巨大な火の塊が、空を焦がして地面に衝突した――トコ。
水蒸気の塊である雲は一瞬で蒸発し、精霊たちの叫び声が木霊する。
そもそも火種である火の精霊が死んだ。
次に風の精霊に、水の精霊、あと闇の精霊と...土の精霊は、どこ行っちゃんだろ。
「ぎゃー!!! あちぃー!!!!」
あたしだ。
術者のあたしも、とばっちりのスリップダメージ貰ってる。
“神の賽”でクリティカル確定のゾロ目が出てた。
範囲無視による、超範囲攻撃魔法【ファイヤー・ストライク】。
魔王ちゃんから恥ずかしくてもいいから技には、名前を付けておくといいと言ってた。
彼女の底なしの知識に寄れば、だ。
ダメージ1~2割アップするんだって話で。
言葉にはしなかったし、今、考えたんで...ダメージが創成されたとこ。
それが着弾後に発生する確率性の延焼ダメージ。
厄介だよ、これは。
条件が揃えば表面温度だけで着弾半径10ブロック外縁に、火災が発生する。
更に外縁から3ブロック離れたとこでも、半々の確率で飛び火が出るって言うんだから。
◇
話はえっと、2刻前に戻る。
魔王ちゃんからの提案により、あたしこと“聖女”がひとり囮になって――抗議はしたんだよ。
後輩があたしの背を押しながら。
「先輩みたいな、攻撃以外の行動がすべてファンブルな子に?! そんな大役を!!」
あ、抗議じゃないな。
ひどく心配しながら、生贄に差し出してる構図だわ。
ヒルダさんも肩に手を置き、更に押し出して。
「トイレに行って、その場で寝る根性があるコイツにか!!!?」
魔王ちゃんの視線が痛い。
明らかに蔑視だよ。
トイレで寝たのは、徹夜明けで。
てか、なんでソレをヒルダさんが知って。
「緊張のあまり、ドジって失敗するでもいい。自慢の聖女ぱぅわ~で乗り越えられるなら......今、ここで敵のヘイト管理が出来るのは、セルしか居ないって事に成る。正教会の連中がアテに成らないと、自分たちで暴露したのだから、な!」
手厳しいけど。
確かにその通りだ。
見栄で連れてきた騎士団は、団長と副団長はまあ。
神殿騎士の中堅騎士だという。
まるっきりハリボテという訳には行かず。
「ちょっと待って、調査旅団の裁可は得てたんでしょ? 何で正規の」
後輩が咳ばらいをし、
団長の老齢な騎士が応える。
「“紅司祭”さまは、神秘科の...その所属の方では無いので。...裁可は威力偵察という」
神秘科で動くのならば正規のいや、本来ある正教会のプラチナ・チョーカー級最大戦力が...出撃る。
正教会の巫女は、信託で『聖女を助力けよ』と告げた。
が、後輩が所属する近代魔法・魔女科だけが、“聖女の行方”を把握しているので。
その裁可とは魔女科から認可されたのだという。
最初から、少数精鋭なのだ。
「それって...」
「ご明察です、先輩!」




