自由都市・東の都“アルーガ” 3
さて解放するにしても。
あたしは周囲を見渡した――見れば見るほど、貧相に振り切れた兵隊どもです。
魔王ちゃんと、エルダーク・エルフの4人は未だいい。
川へ自分の身体を洗濯しに行っていない、ミロムさんとヒルダも...まあ、十分な睡眠と栄養を与えれば。
「こらこら、そこの化け物と一緒にするな! 栄養だけで戦えるか。セルコットと一晩、遊ばせろ!!!」
ヒルダさんが溜まってらっしゃる。
もう、あたしは受け身で蒼炎の指技や、後輩の舌技なんて持ってない訳よ。
「持ってないのか?!」
「ないよ」
ミロムさんがあたしの肩を叩く。
ぴちゃぴちゃと跳ねる黒い血が気になるけど。
「なあに?」
「マッサージは、得意!」
はい。
万能メイド・ミロムさんが名乗りを挙げました。
いや、そのサービスは、さ。
あたしだけにして欲しいのよ。
で、
ふたりとも、自分たちを洗濯してきなさい!!
「ホーム、リバー!!」
川へ誘導する。
「さて、気を取り直して。お爺ちゃんからもなんか言ってやって」
あたしの中の記憶にある爺ちゃんなら、
◇
崩壊したー!!
あたしの爺ちゃんを返せー!
「結論から言うと、邪神に当てられた街“アルーガ”の解放は、勇者が奪還出来なかった場合、最後の砦として機能します。いえ、先行している冒険者の避難所としても...有効な施設に成る筈です!!」
力説してくれたのが、後輩じゃない。
何でそんな事になったのか。
今、まさに魔王ちゃんに踏まれてるからだ。
で、宣ったのは騎士団の副団長。
お爺ちゃんも、正教会の全面支援という形でフォローしてた。
師匠は政治だと言って、参加しなかったけど。
概ね、了承しているようで。
「じゃ、じゃあさ。こんなマンパワーで城塞都市をどう攻略するの?!」
「ま、時間は惜しいな。怯えた魔獣どもはもう戦力に成らんだろうから、邪神というのが知恵ある者だと仮定して...(魔王ちゃんの踏み抜く力が増す)次の行動は狡猾になる。最悪、計略をもってこちらを翻弄するだろう!!」
野宿を惜しんで特攻するか。
或いは時間を放棄して、策略があると分かって臨むか。
「いあ、もうひとつあるだろ」
すっぴんになったヒルダさん、鎧も脱いで肌着姿の状態――生渇きの身体は、若干、色々透けてみえるもので。あれは苺の蕾か、ピンク色...それはひじきの...。
「っ、ヒルダ、サービスし過ぎ」
ミロムさんはいつものメイド服だが、少し堅苦しくない雰囲気。
「もう一つの策は敢えて、城攻めをしない方法」
もちろん。
リスクは高い――迂回する、用心を重ねて“アルーガ”を避けて移動して。背後にその都市を置くのだから、追撃される可能性が残る。いや、間違いなく追撃されるはずだ!
「うん、城から兵が飛び出してくるだろうね」
「なるほど! それは釣だな!!!」
師匠が柏手を打って呼応した。
腰を捻って、釣竿を引くジェスチャーまでしてくれたけど。
「ノリが悪い」
って殴られた。
理不尽だー!!




