自由都市・東の都“アルーガ” 2
「魔王ちゃん、ひどい!!」
虚空に向かって指さす、あたし。
差されたほうに皆の視線が動くんだけど、あ~やっぱり何もない。
いあ、あたしには見えてるんだよ。
なんでかスリットの深いロングスカートを履いてる、魔王ちゃんが其処に。
膝が赤くなってるのが証拠で、彼女は実在するし。
勘違いではなく。
えっと......あわびが見える、ひじきの森の......、その奥に。
◇
土煙が立ち上がる向こう側に、都市があることが確認された。
どうやって?
神殿騎士らが鎧を脱いで。
百人が総出で、思考して作ったのが人間ピラミッド。
その上から見たってのが...
「アルーガだ」
お爺ちゃん逃げてきた道を、逆に進行する道として利用している。
だから中継地として“アルーガ”の踏破も必然的に踏むことになるわけで。
邪神の勢力圏にあるのならば。
「解放しなくては!!!」
後輩の、いや、調査旅団の負うべきことじゃない。
なぜか。
それはあたしたちが教会の意向で動いてるからだという。
「そんな戦力じゃないことくらい」
「もちろん分かってます。冒険者ギルドは目的のためならば、都市のひとつやふたつ...平気で見捨てるでしょう。十分な兵力があっても、都市の解放はしないものです」
そこに利益がない。
生産性のないことはしない。
都市から来た魔物たち。
人らしき皮とトロフィーは、おそらくは住人のだろうと予想がつく。
もう、あの都市には。
「それでも解放します。当方は神に仕える聖なる側の使徒ですから」
門の都で詐欺まがいな、金の亡者だった後輩とのギャップがある。
さすがに其れで萌えを生じるほど純真無垢ってことはない。
耳元で魔王ちゃんが、さ。
《後輩がいつになくカッコを付けておるようだが? 何に酔っておるのだ》
さあ。
最前線の暴れっぷりは、やはり神代の決戦兵器に軍配があがりそう。
押し寄せるビックなウェーブも、力任せに握りつぶしているようで、一部の魔獣使いは散り散りに逃げて行った。
知性が低い獣は、本能で戦慄してくれて。
エルダーク・エルフの前で、仰向けになり腹を見せて『にゃー』と鳴いた。
おっと、元の動物が判明したようだ。
最前線の戦士たちがこっちに戻ってくる。
頭から大量の血を浴びてドス黒くなった、6人。
「ちょ、こっち来んな!!!! あっちに川あんだろ、洗ってこいや」
思わず可視化した魔王ちゃんがある。
えっと、あたしとパスが...
「や、わりぃ。実は不可視化の魔法で知覚出来ないようにしてただけで、パスの云々は関係ないんだわ」
あわびが丸見えなドレスは、幻覚じゃない。
姿を現した瞬間、後輩が魔王ちゃんの下で踏まれてる。
しかも顔が地面にめり込んでる状態で、だ。
あんなにかっこよく、あたしの腕から離れたというのに。
湿っぽい汁、いや、考えたくもないが。
バツが悪くなって離れたのか。
「「「「セルコットがふたりぃ?!」」」」
いい反応だよ。
それこそ、リアクショ...
「どうも、羞恥心皆無の“魔王”ちゃんです」