自由都市・東の都“アルーガ” 1
荒野が広がってるけど、昔は緑豊かな草原があったらしい。
見渡す限りのグリーベルト。
或いは絨毯のように、ふかふかに見えたっていう。
今の惨状を目の当たりにしたら「え? マジ、ここが?」って聞き返してしまいそう。
それほどに酷いありさまだって、こと。
だって今は、ゴツゴツとした乾いた肌のようにしか見えない。
こんな肌が、あたしのだったら卒倒するね。
いや、間違いなく死にたくなると思うわ。
だって、ごわごわだよ。
ぶにょぶにょでもなく。
荒れ放題のひび割れ、赤ぎれ、一部、グロいもんが見えてそうな......
そんな惨状をだよ。
死ねる、絶対に死んでしまう。
渇きを癒せる魔法があったら、嘘でもいいから飛びついてるだろう。
さて。
この目で見えているものが、実は、幻想かなにかで。
そして...
術が解けでもしたら、再び、美しい緑が戻ってくる、とか。
そういうのだったら早く解けて欲しいと願うかなあ。
でも。
“魔王”曰く、
「正真正銘! これが現実だ!!!」
と、突き出た石の上に片足を乗せて。
腕を組み、高らかに嗤うように…
ふんぞり返ってる。
ああ、魔王ちゃん。魔王ちゃん、見えてる...見えるの、あわびが。
「先輩は、虚空を見て興奮してます、デス?!」
今のところ、魔王とあたしだけはパスが繋がった状態のままで。
彼女の姿はあたしの意識でしか見えていない。
な、もんで。
最前線にあるミロムさんと、ヒルダ以外だと。
あたしの腕にしがみついてる後輩と、何かしらの契約を交わしたような趣のお爺ちゃん。
帝国式拳闘術を教えてくれた、師匠しか。
あ、いや。
正教会の神殿騎士のみなさん百名が残っている。
ここ中段列だと思うんだけど。
なんでか、後列になって…。
「ふふ、素人には見えないのよ」
虚空の先には魔王ちゃんがある。
いあ、魔王ちゃんの“あわび”がある――なんて美しいんでしょう。
《褒めちぎってくれるのは有難いけどね》
膝があたしの顔面に入った。
額が急に赤く腫れだして、勢いであたしは背中ら転がった。
もうね、一人芝居のようなもんよ。
「せ、先輩!!!」
慄く後輩。
情けなく『きゅ~』なんて声音で鳴いて。
お爺ちゃんを驚かせた。
《この身体は、セルのと一緒なんだけど?!》
そう。
魔法学校の全講師たちが腕と知識を結集させて、あたしが作られた。
技術はゴーレムの作成とホムンクルスの研究が利用され。
あたしの排卵日を利用して、あたしが生まれた。
ねえ、ひどいでしょ。
エルフの排卵周期なんてすっごい間があるのに。
ちょっと、ぽんぽん痛いから保健室で寝てたら、実験されてたわけよ。
ババアが言うには、心身ともに軽くしてやったよ、だ。
「だ、だいじょうぶ… ひ、ひとり、ひとりエッチみたいな」
な、わけがない。
蹴り飛ばされて額を腫らせてぶっ倒れたんだ。
宴会芸じゃないことくらいは――「な、なるほど!!」
騎士団長が納得した。
「聖女様は身体を張りますね!!」
阿保か~