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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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邪神と青年

 青年が“神秘”に触れたのは、神学生としてこの島大陸に訪れた頃だ。

 恐らくは10年くらい前に成るだろう。

 奇妙な形の“()()()”が邪神の棺だったという。



 邪神と表現しているけど。

 神さまのソレとは。

 ちょっと違う。


 乙女神が翻訳したのは、壁や床を這う“G”と大差ないってだけ。

 仮に“ジョージ”としよう。

 いあ、“ジェニー”は頭文字が違うか...“グラトニー”は、唐突にかっこよくなって。

 違う気がしてきた。


 もう、“ジョージ”でいいや。


 世界の隙間から入り込んできた、別次元からのゲストだ。

 ただし召喚ばれもしないのだから、異物イレギュラーと一緒ってはなし。

 さあて。

 青年の素性は、共感性の高い――

 正教会の神秘科に属する神学生だった。

 後輩の“紅”が所属するのは、近代魔法科で教鞭も取るし、専用こべつの教室もあるという。

 異端審問官は、まあ。

 暗部に籍があるだけで名札付けて、練り歩いてる訳じゃない。

 こいつほど上手く利用されてるのも珍しくはない。



 さて、話を青年に戻そう。

 神秘科の目的は、神代以前の“純粋な神力ちから”に興味がある。

 解体して、分析し、監察することが主な行動であるから、使い熟せるようになるとか。

 そういうレベルには未だ至ってない。


 いずれは――は、あるかも。

 エルフ出身の学生や講師が多いのも理由かもしれないけど。

 あたしが召喚した、エルダーク・エルフさんら曰く『遺物ってのは大概、埋もれてる理由があるから埋まってるもんだ。まず埋もれてた状況をしばらくじっくりと観察して、顎から上の臓器でしっかり()()()...そして、元あった場所に埋め戻せ!!!』と、語ってくれた。

 あたしも同じ感覚だ。

 別人格に分けられた“魔王”ちゃんという例もある。


 これなあ。

 どっちが主人格か答えは出てないんだけど。

 学校の教授や魔法使いどもが、魔王ちゃんに肉体まで与えたんで、更にややこしく拗れた事例になって。

 神秘の追求が生じさせた事故って事になってる。

 まあ、あたしのことはいいや。



 青年の共感性の高さは、6代前にまで遡ると。

 そこにハーフのダークエルフ族に連なる血があった、からだ。

 もっとも薄すぎて血から得られる役得が、ない。

 神学生になって、神父を目指すってことがなければ、彼の生涯に“神秘”の関りは無かったはずだ。

 そして、巫女と同じ力に目覚めることも。


 神秘科に必須なものは...

 類まれなる共感性の持ち主である事。



 邪神と呼ばれて牢獄に繋がれてたのは、外世界から来たものの残滓。

 本体の方は、火焔の魔女に焼かれたまま、この世界から去ったようだけども。

 燃えカスが残ったのは――彼女のミスだな。


 いや、派手に燃やしたから。

 世界にはそんな残滓が未だあると言っていい。

 ()()には“冒険者ギルド”を利用している。

《角笛だと?!》

 記憶の中に音色が残っている。

 多くの戦友とともに魔女と戦い散っていった記憶が。

 ただし、残滓には残るだけの憎悪しかない。

《あれが吹かれたって事は...》

 いいや、いいやと煉獄の炎で身が焼かれる世界で...。

 頭を抱えて、戦慄してる。

《...近づけるな! 遠ざけろ!! 俺にアイツを近づけさせるな!!!!》

 吠える邪神が、人っぽいなと。

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