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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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聖女の行軍 4

 あたしたちの歩みは、魔王ちゃんの角笛によって知られることになった。

 それと同時に、囚われている“勇者”の処遇も、変化していた。

 だって邪神さまは、これまでの余裕があるような態度が激変し。

 僅かに投げ槍っぽくなった。


 心、ここに非ず。


 邪神に依り代と定められた青年の自我が、深層より浮き上がり易くなって。

 呪縛という支配が曖昧になってた。

 まあ、要するにキョドって、情緒不安といったところか。


 チョロいな、イレギュラーさん。



 あたしたちよりも先行しているのが、冒険者ギルドから派遣された人たち。

 調査旅団と聞いてたけどね。

 正教会の方々が、無駄な出陣式をしている時に、ミロムさんのツテで顔合わせすることが出来た。

 はっきり言って。

 あたしたちの方が甘く見積もってる気に、させられたわ。

 神秘の強奪だと、後輩は言ったけど。

 あれは教会関係者として見た、敵愾心めいたものじゃないかな。

 奪う、奪われとかされてる内に、目的を見誤ってる可能性が指摘される。


 だって、あの人たちの表情は、さ。

 この遠征に出る前のお爺ちゃんだったもの。

 後輩が篭絡する前のお爺ちゃんがみせてた、険しい表情。

 神秘を前にしたとき。

 傲慢が死を引き寄せる。

 怠惰が絶望と向き合わせる。

 強欲がすべてを奪う。

 と、彼らは語った。

 いや、騙り聞かせてくれた。

「要するに、彼らは先輩を怖がらせたのですよ!!」

 あたしの股間に頭を埋める、後輩。

 そんなトコに顔を突っ込んだって、新調したての皮革パンツの匂いしか。

「いいえ、いいえ。革細工からのぴっちり感から、先輩の()()()が見えるの、デス! 密着していると汗もかくでしょうし、当方の鼻先にも先輩の潮気、感じマス!!!」


「なんか、キャラかえてきた?」

 語尾の強調はなんだろう。

 まあ、この子のアンテナは昔ら非常に高かった。

 その後のスキンシップは、学生時代と比較すると...ね。

 すっごい大胆になったと思うし。

「――正教会うちの隊でも、調査旅団として通常よりも遥かに、兵数が足りてません。真面目に言えば、冒険者ギルドの用意した五百人よりも...多いんです。ですから、当方たちが明るく振舞わなければ、皆が不安に、ぶっちゃけ当方も怖い! 怖いんです」

 ぶっちゃけられた。

 あたしの股の中で。

 顔は見えないけど、震えてるのは分かる。



「大丈夫だよ!」

 後輩が少しだけ顔を上げた。

 あたしの上衣の裾で見えないんだけど。

 たぶん、惚けてるだろう。

「これは、まあ、詳しくは言葉に出来ないけど。神にはその反逆者を、悪魔にはより強いものを当てる。この戦いは機先を制した者が勝つ!!」

 あたしのガッツポーズ、似合わねえ。

 なまっちろいエルフの細腕じゃあ、豆もやしかって感じの。

 まあ、後輩もだが。

 同じ馬車に乗り合わせている、ミロムさんとヒルダが微笑んでくれてる。

 勇気出るわ。

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