まさか、台風があんな方向に出るとは
まさか、紆余曲折の果てに――。
鹿児島か熊本の県境っぽいとこから、上陸する予報円が出てくるとは思いもしませんでしたね。
正に神秘です。
気象の神秘か、台風というメカニズムの方か。
ただ、進路となっている先は大変な話ですし。
面白がってる訳には行かないんですけど。
天候を操れる魔法があったら、台風を打ち消しできるんでしょうかね。
邪神の存在?!
耳を疑った――何を言ってるんだ、この女神はって。
確かに、自由都市連合の調査について。
いくつかの不安な話は聞かされてたような気がする。
が!?
その邪神のとか言うのは、初耳な気がする。
お爺ちゃんからは『あそこには何かあるかも知れん。近づくなら十分に気をつけろ』って類の忠告ぐらいだし、全貌だって分かって無かったんだが。
ほう、神秘というのは。
なるほど邪神か。
頷きながら、
あたしは乙女神のこめかみをぐりぐり拳で潰しに入ってた。
ああ、なんかそうしないといけない気がしたんだよ。
「や、や~やめやめ」
可愛い声で鳴いてくれるものだ。
「痛い、痛い、痛いぃぃ!!!」
そりゃ痛くなければ、バツにもならんだろ。
そ~れ、ぐりぐりぐりぐり...
◇
こめかみぐりぐりの拷問は、乙女神には新鮮だったようで。
最後はだいぶ楽しんでくれたようだ。
あたしは、聖女ぱぅわ~全開だったんだけどもね。
「で、邪神の話。詳しく聞かせて貰えるのかな?」
今からそんな死地に向かうのだ。
正教会とギルドだけ知っているのはズル過ぎる。
「あ、彼らにも匂わす程度にしか」
「いいから話せ!」
「はい...」