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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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旅は道連れ、 4

「なになに? 怖いよ、ふたりとも」

 あたし、なんか言った。

 変なこと、言った?

「パジャマ?」

 後輩の表情がマジ、怖い。

 な、なんだよ...

 来てたろ? 冒険者ギルドに登録し、始めてもらった給料で買った“首周りがヨレタ、ロングTシャツ”だよ。

 下着はパンツしか履いてないけど、膝上12cmまであるロングで。

 お尻までしっかり隠れるから、黄ばんでても捨てたくない逸品!

「あ、ああ...あれが、パジャマ」

 な、なんだと思ってたんだよ。

「えっと、だらしが無いのかなっと...」

 トッド君もおんなじ風に思ってたらしい。

 わざわざ水浴びした後に、黄ばんだ服を着るのはエルフ族の伝統とか思ってたらしい。

 マジか!!

 いや、そんな風習ねえわ。

 郷の連中にしかられる、わ!!

「えー」


「ま、キャンピング仕様はセルコットさんのいう...着替えも出来るスペースもありますから」

 じゃ、じゃあさ。

「はい?」

 お風呂は?

 赤面しながら問うた、あたしがバカだった。

 後輩はまたも、

「ぷー、クスクス!! 姐さまは、7日1回しか風呂入りたがらない子じゃないっすか、生理中も水浴びしないで匂わせてる子が、今更、ぷー。男の子の目を気にしてるんですかー!!!」

 だ、そうな。

 いや、そういうのじゃなくて...

「いや、ありますけど。その場合はドラム缶になります」

 持って行くとなると、別の馬車が必要になり...馬の保証金とか馭者日当とか面倒になるとか。

 ま、これらの経費はすべて魔法詠唱者協会持ちだから、実のところあたしたちには関係ない。

「それを言ったら身も蓋もありませんし、絶対に経費で落ちるとは確約も出来ません!!」

 だって。

 えー???!



 女神正教会の護送車列に傭兵団が襲来し、王都へ向かう街道のひとつは凄惨な場と化した。

 死者の躯は、傭兵と教会とで埋め尽くされる。

 あたしの後輩である“蒼炎の魔女”も負傷した身だ。

 今は、生き残った聖騎士と、治癒士数名で行動している。

「お怪我は?」

 突如の攻撃により肉薄し、範囲攻撃となる魔法を封じられたため遅れをとった。

 “蒼炎”はそれでも、友軍の耐性強化などに努めたけども――だ。

 自身が手傷を負わされ、護送中の教区長とギルド長が敵の手中に堕ちてしまった、という状況。

「わたくしの方は自分でなんとかすると...して、追撃は?」

 騎士は横に振った。

 聖騎士だけがこの先の盾であり、剣である。

 神殿なり聖堂の騎士団でもあれば、彼らを残して追う事も出来た。

「およそ傭兵団は二つの目標で行動していたのでしょう。先のひとつは...」


「わたくしたちの分断。戦力の弱体と要負傷者をつくること」

 明察と言われ、聖騎士は手持ちの武器を見る。

 複合弓の数本と、帯刀のブロードソードのみ。

 仮に追撃したとしても、聖騎士数人では逆に撃退されかねない。

「魔力があっても、こんな何もないとこで籠城する...くらいしか無さそうね」

 荷馬車を運んで囲いを作り、そこへ城壁魔法マジックランパートの敷設。

 持ち堪えて2日余り。

 治癒士たちにヒールなり、エナジー・マジックドレイン・ポーションを分けて貰うなりで食いつないでも、倍の4日くらいしか野宿できそうにない。その間に、獣に襲われる確率はかなり高くなる。

「――と、推測したら“蒼炎”さまを置いて追撃なんて出来そうにありません」

 聖騎士長の優しい言葉。

 彼女が普段から騎士や、治癒士に心を砕いている証左だ。

 いざという時に気遣ってくれる。

「ま、とりあえず傷を見せてください」

 治癒士は彼女の手を退かせて、傷を見る。

 やや深いが痕が残るだけに見えた。

「やっぱり痕が残るか」

 自分でも気が付いてた。

 服を脱いで、あたしが気に障るのではないかと心配したようだ。

 あたしが気にするとしたら、後輩の命だわ。

「とりあえず、今はご自愛を」

 逃げた馬を探し、

 動ける荷車と引き合わせる。

「とりあえずは近くの村へ」


「いや、一度戻り、別のルートから王都へ帰還する。進めば追撃とみなされ、今度こそOUTだと思う。ここは臆病なまでに慎重に動くとしよう、な?」

 “蒼炎”は確かに臆病風に吹かれてた。

 利き腕の負傷だから、まともに魔法が操れるか難しいとも考えて――聖騎士長も深く頷く。

「では、戻りましょう!」

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