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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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魔法学校に魔王がいた 4

 競争と言ってもそれぞれ。

 魔法使いのともなれば、まず、空中戦くらいしかない。

「え?! 徒競走じゃないんですか!!!」

 なんで、そう思った?!

 あたしでも箒だと思ったのに。

 蒼炎は、かけっこを提案したつもりだった。

 おいおい。

 どんだけ花畑なんだよ。

「それは不味いな」

 ん? どうした後輩たちよ...

 実に不穏な空気が場を包む。


 あたしの個室で、

 あたしのお気にのクッションを、それぞれが独り占めしながら、

 ふたりが真剣に唸っている。

「どったの?」


「魔法で、才女ひめに勝てる自信なんか無いって話です」

 あたしが箒で競争すると、連想したのだ。

 相手の黒衣の才女だって。

 当然、同じように発想するだろうという話だ。


 後輩と同じ徒競走だったら、この学校の思考レベルは...

 まず一度、壊した方がいい気がする。



 後日、日を改めて――黒衣の才女の体操服姿を拝むことが出来た。

 実に由々しき問題だ。

 いあ、この学校は何を教えてるかってことだ。

 あたしらは魔法使いで...

「な、なんだと?!」

 本気で、走る気だったようで。

 取り巻きの女の子らも、驚いてる様子。

「だって、競争だっていったら」

 いったら?

「駆けるだろ、奔るだろ、そんで!! 百メートルだろ?!」

 どこの陸上競技者だよ。

 百歩譲って、徒競走だとしても。

 百はねえよ。

 ま、50メートルくらいだろ。


 いや、ならないよ。

 させねえよ?!!

 ここは魔法学校だろ???!


「うむ、セルコットは鬼だな」

 はぃぃぃぃ?

「仮に箒の勝負となれば、彼女たちに勝ち目はなかろう。だが、この旧文明の資料にあった、ブルマと白いダボついた大きめの体操着なる勝負服! これを着て戦うは戦士の誉れ」

 ちょっと違うけど。

 なんとなく、キレイな足が拝めて、あたしはラッキー。

 なるほど...

 彼女の間違いを正さなければ、この勝負はまだ勝ち筋の見えないってことか。

 OK!

 いいじゃん、その言質いただきました。


「後輩たちよ、それで」

 ん?

 後輩たちは箒に跨ってスタンバってる。

 おい、どうした。

「貴様ら、それでも魔法使いか!!」

 正々堂々とって取り巻きの子らが吠えている。

 才女の方はやや、ひきつった様子で。

「なるほど、これは。うん、そうか出来るものが背負う業なのだな」

 何を言ってやがります?


 ほら、後輩たちも降りなさい、大人げない。

「「これは勝負事なのです、先輩!」」

 ふたりしての反論。

 おお、仲いいね。

「ハンデキャップですよ!」


「望むところだ」

 で、徒競走vs箒なんていう前代未聞の勝負が行われた。

 あたしの記憶するところ。

 ここで()()()()降臨ですわ。

 瞬きの瞬間に、

 黒衣の才女は自身へ大人げないバフを大盛り、増し盛りで付与し。

 10秒後には、スピードレーサーよろしく滑走する箒のふたりに追いついて。

 その刹那で追い抜いて行った。


 彼女はゴールのあたしを爆風で吹き飛ばして走り抜け、

 キャンディスの対岸にある港町へ僅か5分で到着したという。

 彼女の弁明を聞くと、

「バフの爆盛り後、トイレに行かなくちゃと思って」

 我を忘れたっていうんだけど。

 吹き飛ばされたあたしは全治16週間の重体へ。

 えっと、何でこんな事になったんだっけ?

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