魔法学校に魔王がいた 4
競争と言ってもそれぞれ。
魔法使いのともなれば、まず、空中戦くらいしかない。
「え?! 徒競走じゃないんですか!!!」
なんで、そう思った?!
あたしでも箒だと思ったのに。
蒼炎は、かけっこを提案したつもりだった。
おいおい。
どんだけ花畑なんだよ。
「それは不味いな」
ん? どうした後輩たちよ...
実に不穏な空気が場を包む。
あたしの個室で、
あたしのお気にのクッションを、それぞれが独り占めしながら、
ふたりが真剣に唸っている。
「どったの?」
「魔法で、才女に勝てる自信なんか無いって話です」
あたしが箒で競争すると、連想したのだ。
相手の黒衣の才女だって。
当然、同じように発想するだろうという話だ。
後輩と同じ徒競走だったら、この学校の思考レベルは...
まず一度、壊した方がいい気がする。
◇
後日、日を改めて――黒衣の才女の体操服姿を拝むことが出来た。
実に由々しき問題だ。
いあ、この学校は何を教えてるかってことだ。
あたしらは魔法使いで...
「な、なんだと?!」
本気で、走る気だったようで。
取り巻きの女の子らも、驚いてる様子。
「だって、競争だっていったら」
いったら?
「駆けるだろ、奔るだろ、そんで!! 百メートルだろ?!」
どこの陸上競技者だよ。
百歩譲って、徒競走だとしても。
百はねえよ。
ま、50メートルくらいだろ。
いや、ならないよ。
させねえよ?!!
ここは魔法学校だろ???!
「うむ、セルコットは鬼だな」
はぃぃぃぃ?
「仮に箒の勝負となれば、彼女たちに勝ち目はなかろう。だが、この旧文明の資料にあった、ブルマと白いダボついた大きめの体操着なる勝負服! これを着て戦うは戦士の誉れ」
ちょっと違うけど。
なんとなく、キレイな足が拝めて、あたしはラッキー。
なるほど...
彼女の間違いを正さなければ、この勝負はまだ勝ち筋の見えないってことか。
OK!
いいじゃん、その言質いただきました。
「後輩たちよ、それで」
ん?
後輩たちは箒に跨ってスタンバってる。
おい、どうした。
「貴様ら、それでも魔法使いか!!」
正々堂々とって取り巻きの子らが吠えている。
才女の方はやや、ひきつった様子で。
「なるほど、これは。うん、そうか出来るものが背負う業なのだな」
何を言ってやがります?
ほら、後輩たちも降りなさい、大人げない。
「「これは勝負事なのです、先輩!」」
ふたりしての反論。
おお、仲いいね。
「ハンデキャップですよ!」
「望むところだ」
で、徒競走vs箒なんていう前代未聞の勝負が行われた。
あたしの記憶するところ。
ここで魔王さま降臨ですわ。
瞬きの瞬間に、
黒衣の才女は自身へ大人げないバフを大盛り、増し盛りで付与し。
10秒後には、スピードレーサーよろしく滑走する箒のふたりに追いついて。
その刹那で追い抜いて行った。
彼女はゴールのあたしを爆風で吹き飛ばして走り抜け、
キャンディスの対岸にある港町へ僅か5分で到着したという。
彼女の弁明を聞くと、
「バフの爆盛り後、トイレに行かなくちゃと思って」
我を忘れたっていうんだけど。
吹き飛ばされたあたしは全治16週間の重体へ。
えっと、何でこんな事になったんだっけ?