魔法学校に魔王がいた 3
あたしらの旅団は、正教会が用意した神殿騎士と、その神の兵士なんて物騒な呼び名の約200人で行動することとなった。構成される兵団の方は、騎士団長に壮年のさわやかイケオジ、副団長にスレンダーボディながら、出るトコ出てる淑女のイケ女。
正教会の理想とする、こう。
ユニットが組まれてて。
イケオジが声を掛ければ、イケ女がそれに反応する。
そんな風景がそこにあった。
えっと、あたしは要らなくないですか?
こんな貧相な身体で...なんかすいません。
生きてて、ごめんなさい。
「ちょー! ちょっと先輩!!! ど、どこ行くんですか!」
引き留める後輩。
すべてを投げだそうとしてた、あたし。
だって。
正教会の理想は――そちらの兵団みたいな。
「自虐!」
「自虐し過ぎです。何のために苦労して、ロムジー閣下を嵌めたと思ってるんですか!! 乙女神さまから“お願い”されたことを、実行しなきゃならんでしょうが。まったく、主人公は先輩で、あんなポッと出の騎士団長や副団長じゃないです」
言い方。
後輩は、あたししか認めてない子だって分かってた。
それ以外の口の悪さは変わってない。
そっだ。
確か、魔法学校でも...
なんかそんな事でいつも死にかけてたなあ。
◆◇◆◇
キャンディス魔法学園史上類を見ない――って聞かされて、耳が餃子に成りかけた頃。
後輩とその才女が、あたしを賭けて戦う事になった。
あたしだって可愛い後輩が消し炭に成るのは困る。
ちゃんと落ち着くように宥めたさ。
こんな無能で、可愛げもない、どうしようもないエルフなんかに人生を賭けちゃダメだって。
「自虐、自虐が地底まで突き刺さってますよ、先輩」
言うて、いいところが無いんだし。
対岸の“姫”さまの取り巻きも、
「あんな牛蒡みたいなのが本当に必要なんですか?!」
あ、それは失礼だろ、牛蒡が。
栄養が無くとも木の根っこくらいは、その。
いあ、自慢も出来ねえ。
「私が決めたことだ」
いつもの冗句でしょ?
分かってる、分かってるもん。
「また、先輩の悪い癖ですよ、その自虐体質」
後輩が屈託なく微笑む。
ああ、かわいい。
抱きしめちゃおうかなあ。
「さあ、抱き着いてもOKです!」
「むむ、それは聞き捨て成らんな。セルコットはそう易々と渡せんぞ!!!!」
と、才女様からファーストネームで呼ばれましたが。
同じクラス位の面識しかないような。
いやまて。
あの子は何でも出来るのに、何故にあたしの前に居るんだろう。
「それは、お前を手に入れる手前に決まってるだろ!」
後輩が吠える中で、ついに“姫”のターゲットがあたしだと知る。
いや、知らされた。
取り巻きたちも、顔を覆いながら崩れ落ちてる。
あ、これ聞かされてたクチか。
いじめっ子の心理――好きと嫌いは表裏一体だと。
仮面の才女を見る。
なんか誇らしげに微笑んでる気もする。
いや、あたしの横で鼻息の荒い後輩の方が気になる。
どういう方法で取り合うのか。
「そうだな、」
「競争で!!!」
蒼炎の魔女が中庭の芝生を豪快に踏み込みながら、
膝をガクガク震わせて、叫んでた。
この3人で、よくキャンプしたっけなあ。
って、オイ!