魔法学校に魔王がいた 2
なんで回想に入ってるかって言うと。
後輩の差配によって爺ちゃんを黙らせた、正教会一行はだ。
自由都市への調査団を派遣することになった。
いあ。
これは大義名分の話で。
要するに、乙女神さまからの依頼遂行のため。
セルコット・シェシーを送り届ける旅団が、組まれることになったわけ。
で。
その旅すがらに。
話の一つも無いかなあと、あたしの昔語りでもしようかと。
わりと...
面白いかなあって。
◇◆◇
魔法使いが杖を使うのが当たり前に思われているのは、魔力の媒介が木の棒に近いものだったから。
キャンディスでも、実のところ――講師の大半がバラエティ豊かな獲物を使ってた。
校長なんかは、マスケット銃。
魔界で生産されたという特別な小銃という話で。
銃身に刻まれた魔紋をなぞるだけで、射撃できるという。
あと副校長。
あの人の獲物は弓だったなあ。
普段、生徒に向けて使う時は、矢の先に吸盤が付いてた。
うん、あたしも良く射抜かれてたなあ。
あたしの師匠はオーソドックスな木の棒。
あれは...こん棒みたいなもんだったよ。
酔った勢いで、酒場の暴れん坊と喧嘩してたし。
意地悪な主任講師は。
杖剣っていう刃付きの杖。
ブロードソードのような形状で、魔法剣士御用達。
あたしの場合は、ショートソードそのものだけど。
「セルコット・シェシー! 君は、将来の目標は何です?!!」
名指しだ。
何かとあれば目の敵にされてるような気がする。
「お爺ちゃんみたいな、剣士に」
大爆笑が講堂を包む。
分かってた。
でも、夢なんだからいいじゃないか。
「ふむ...ソレは不十分。諦めるという選択肢も用意すべきでしょう」
例の杖剣が、部屋の隅を刺す。
階段状に連なる先。
仮面で顔を覆う例の令嬢があった。
相変わらず黒っぽいローブめいたドレスに身を包んでた。
くそー、いつもスましてて、艶があってエロい娘だなあ。
まあ、そう考えてた時期もありました。
取り巻きから、
「厭らしい視線を“姫”に向ける出ないよ!!」
とか、怒られた記憶がある。
「君の成績ならば、どこでも目指せるが」
キャンディスを震撼させた魔法使いとは彼女だ。
あたしと入学した時期が被り、謎めいた令嬢のひとり。
使い魔召喚では、ドラゴンを使役したという才女。
到底、敵いませんって。
「興味がありません...が、どうしてもと言うのならば――世界を欲しましょうか」
は?!
今、なんつった???!!!!
主任講師も瞬きが多くなってる。
聞き間違ったかと思ったようだ。
「はは~」
乾きすぎだろ。
「冗談は、」
「冗句と言えば、まあ。本気と言えば、それなりに」
これが、姫のご乱心で。