魔法学校に魔王がいた 1
キャンディスの魔法学校。
マジックキャスターを育てる独立の教育機関として、そこそこ世界に認知されていた。
創設者は、名前の削られたエルフって事にされてるけど。
たぶん名前を表に出すことが出来ない。
シャイな有力人物たちじゃないかなあって思ってる。
てか。
卒業した後の就職先が桁外れでヤバすぎる。
とはいっても。
あたしのような、成績が中途半端でどうしようもないクズの貰い手先は皆無だけど。
そこはそれ。
愛護団体で貰われる先を持つ。
愛玩動物達みたいな感覚で。
あ、ちょっと。
なんがか悲しく...
後輩たちは優秀だったなあ。
紅の修道女って呼ばれる子は、当時からも光ってたっけ。
ハーフだとか、クォーターとかいう血統を抱えてて。
生い立ちの怪しさが光を際立たせてたような、気もする。
似た環境なのに。
まったく、あたしと類似点がないみたいな。
あの子は、そう。
その当時から修道女みたいな恰好だったね。
で、子供たちは“シスター”って呼んでたっけなあ。
バカにしてたけど。
実力差が出ると、尊敬の意味で“シスター”。
ま、姐さんみたいな感じかな。
◇
蒼炎の魔女と呼ばれる子も。
あれは天才だね、一種の。
紅が天然だとすると、蒼炎は努力型の天才。
卒業を目の前にした数か月で化けるヤツ。
あれだよ。
いやあ、牛蒡抜きってヤツ?! あたしの隣に居たのに抜き去られてた。
あ、えっと。
あたし?
留年しちゃって。
後輩たちと同じ年で漸く、卒業できたクチ。
ま、ギリギリだったんだけど。
「また、問題児さんですか?!」
廊下で数人に絡まれる、あたし。
この時は苛めだって気が付かなかった。
魔法は火属性の初級魔法が使えるし、剣術も得意だったから。
実のところ、魔法剣士に憧れてた。
爺ちゃんが、アレだしね。
「筆記試験は中のギリギリ、実技は力任せ、使い魔に落ち葉を出すとか?! とんだ問題児ですねえ~ 聞こえてますか? 理解してますか? その頭はまさか飾りでも」
ま、顔はそこそこマシだったと思う。
女の子はバカな方が、可愛げがあるって言うし。
あたしにだってワンチャン。
いや、マジなバカは得るものも無いか。
まあ、今ならばそれが現実だと分かるよ。
でも当時はねえ。
「(深い溜息)こいつまた上の空だよ?!」
ああなんてこと。
傷つくなあ、この時のメンツはまあ、覚えてる。
ひどく突っかかってくるのは、黒衣の仮面令嬢なる取り巻きの人たちで。
あれは悪意の塊のような。
まあいいや。
で、あたしの頭を爪で刺すのが。
曾祖父ってのがどっかの国で賢者だったっていう娘。
彼女が凄いわけじゃないけど。
やっぱり血統主義が残ってるのは、何処の世界もだ。
かくいうあたしも、ホーシャム・ロムジー伯爵の孫娘と言えば聞こえは言い訳で。
そりゃ、嫌われるかもなあ。