後輩とおじいちゃん、再び 2
「この記録を、ロムジーさまに?」
お爺ちゃんは最後まで、あたしと邪神教徒が交わることに反対してた。
かつて飛竜の子を召喚してしまう、あたしと。
勇者の能力まで奪える存在との邂逅は、リスクが大きいと。
そう、感じたのだと思う。
女神正教は、利益ありありだ。
後輩にどう影響するかは分からないけど。
魔法使いの学校の方針からは――たぶん、だいぶ違うような気がする。
彼女たち。
後輩の“紅”や“蒼炎”らは、学校の秀才たちだ。
そして、成績上位者には任務が課せられる。
マジックキャスターとして、
世界の調停者、あるいは均衡を保つべく働く抑止力。
中二的に言えば、
光と闇の戦い――ってところだろうか。
あ、あたし?
成績は中の下、卒業もギリギリの落ちこぼれだったので。
普通に放り出された形。
校長からは「我が校はじまって以来の汚点ですね。こんな娘を拾ってきた教授にも、減点ですよ!!」とか言い渡された記憶がある。
ま、使い魔召喚の授業で――魔法陣に落ち葉を出したり、糞を呼べば...
成績も悪くなるだろうさ。
しかし。
「孫娘が可愛がってる娘に手を出したのだと... 知覚しなくとも記憶が断片的にあれば、あの剣星とて正教会の言葉も行動も、乙女神さまから先輩に下った“お願い”にも、邪魔立てしなくなるだろう。今は、先輩が無事に聖女として覚醒されることが肝要なのだ!!!」
ほう。
そんな事を考えて、自ら火に飛び込んだわけか。
殊勝なコト。
いや。
余計なことを。
◇
お爺ちゃんが、目覚める。
鼻にかかる香しい、いあ、華やかで甘い香りの――「な、なんじゃあ!! こりゃあ」
仰け反って、シーツを彼女から剥ぎ取ってた。
朝日に照らされて、白く輝く白い肌。
ハーフエルフでも色白だと、透き通るような柔い肌を持つ。
後輩のはそう、箱入り娘のように傷一つない品のあるもの。
あたしの布団に潜り込んでは、そのキメの細かい若い肌をこれみよがしに見せつけてくれたものよ。
ま、どうせ。
あたしのは傷だらけですよ~だ。
嫉妬じゃないよ。
そんなに意識レベルが高いわけじゃない。
ダンジョンに潜ったり、盗賊狩ったり、暗殺者を退けてた生活では、自然と生傷が絶えなくなる。
治癒魔法で回復できるけど。
結局のところは自己の治癒力を、パワーアップさせてるだけだから。
生命力の前倒しと言うか。
前借とでも言うべきか。
無茶をすれば寿命も縮まるってのは魔法らしくて分かり易い。
おっと怖い方向へ話がそれたが。
お爺ちゃん、頭がパーッと白くなってるとこへの追い打ち。
キーワードで発動する遅延型記憶操作魔法――「昨晩は、とても...激しくて」
よく言えるなと、つくづく後輩が恐ろしい。