後輩とおじいちゃん、再び 1
その日、後輩は汗ばんだ体に薄衣を張りつかせて――。
じいちゃんは、彼女を壁際まで追い込んでた。
普段の自信たっぷりで横にぴんと張った自慢の耳も、この時ばかりは流石に。
いや。
今ばかりは、その耳がした下がりに下がって、怯えるようにぴくぴくと。
自信喪失気味で、虚ろ。
胸元に腕を畳んで小さく身構え、震えてる感じ。
「――あ、らい...息で、すね...」
小さく呟く、さえずりのよう。
いつもの後輩らしくもない。
胸元に2本の指を突き立て、
高飛車に嘲笑してくる、あの子の姿はどこにもない。
涙目、めずらしい。
弱弱しい? そんな態度は見たことがない。
獣のような壮年のエルフに迫られて、
顔を背ける子じゃない。
だって、後輩だよ?!
あたしの後輩は、どんな悪魔の前でも強がってみせる子なんだよ!!!
そんな子が、怖がってるですと?!
◇◇
壁に押し付けられた後輩の図。
尻の肉に顔を埋める全裸の男――「甘い、甘い香りがする」
彼女の華奢な身体では腕力に勝る腕に抗うには困難なようで。
「もう、いいでしょ!! カット、カット!!!!!」
壁に頭がめり込むんじゃないかって、ほど追い詰められてた後輩が苦しそうに叫んでる。
その言葉とともに、部屋の隅から修道士と修道女が湧いてきた。
全裸の男は未だ、後輩の尻を嗅いでる最中。
「止まんねえっすよ、司祭さまがよろしければ。お、おれのエクスカリバーを」
「知らないわよ!! 当方、殿方のブロードソードに興味は無くてよ。いえ、むしろあなたの帯刀ショートソードに関心がないの。吸われたり、舐められたり、弄られれば...個体に興味がなくとも身体は正直に反応するけど?!」
ローブを用意している部下の修道女に視線を向ける。
代わりに彼女が口を開いて――
「――寛大なる司祭さまは、その気がないと申されているのです。さっさと、その貧相な小刀を仕舞いなさいみっともない。皮の被った剣など、ナイフにも劣る!!」
辛辣な物言いだけど。
割礼が当たり前の世界は、わりと珍しい。
大陸にもいくつかの国があるけど。
たぶん、100あって1いあ、2の王国はあるかも。
宗教的、あるいは習慣としての様式で剥かれるとこも、少ないと思う。
だから...
擁護するつもりはないけど。
エルフも含め、男の子は被ってます!!!
普段から抜き身なのを見て、
あたしらは恐ろしさと驚きと、気恥ずかしさと、えっと...
これが入ってくるの?!で、騒いじゃいますが。
いあ、マジぶらぶらしてるもん見せられても、すっごい怖いんだけど。
◇
「いい映像は撮れたんでしょ?」
後輩の側近らが身支度を整えてくれてる。
隣の部屋では、お爺ちゃんが爆睡しているんだけど。
あ、さっきの男優だけど。
伸びてるね。
修道士さまがたが『よくも司祭様の桜のような柔肌に!きたない顔を押し付けたな、万死に値する』と、嫉妬紛いなお気持ちをだ。
各々で口にしながら叩きのめしたとこ。
で、その修道士も今、後輩に踏まれるために床で転がってる。
この世界は変態しかいないっぽい。